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ホワイトデーから丸三日が過ぎ、3月18日。
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やや日も傾いた夕刻、アレクシアは、いつものように帰宅して。
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アレクシア
薄いコートをハンガーにかける。
デスクの椅子に鞄を置き、一息。
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アレクシア
居間への扉を見て、わずかにためらい。
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アレクシア
それから、ベッドに腰を下ろす。
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アレクシア
「……はあ」
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アレクシア
溜息が落ちた。
ここ数日、一人になるとそうであるように。
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『気づいていなかったんですか?』
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アレクシア
ああ、気づいていなかったとも。
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アレクシア
自分に想いを寄せてもらうことなんて、考えたこともなかった。
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アレクシア
そういうものは、なんでだか、ずっと遠くにあるような気がしていた。
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『俺はずっと、アレクシアが……好きだから』
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『私は毎日アナタの事が好きになっていくのに、それでは不公平だと思いませんか?』
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アレクシア
返事は、待ってほしいと言った。
とても即答できなかった。
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アレクシア
好き。嫌い。ふたつに分ければ、好きだけれど。
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アレクシア
自分の好意にどんな名前がつくのか、わからなくて。
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アレクシア
わからないまま、もう丸三日、過ぎた。
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アレクシア
「はあ……」
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アレクシア
あれから、自分もあの二人も、少なくとも表向き、普通の顔をしている。
本当に平然として見えるのは、兄の方だけだけれど。
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アレクシア
でも、いつまでもごまかしているわけには、いかない。
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アレクシア
ちゃんと考えると言ったのは自分だ。
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アレクシア
目を閉じて、深く息をする。
自分の中に目を向けるために。
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アレクシア
まず。
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アレクシア
「……きらい、では、ない」
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アレクシア
好き嫌いで言うのなら、彼らを嫌いとは言えない。
それがどういう種類のものかを置けば、好きの側にいるのは、そう。
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アレクシア
「……最初を思うと、よくもまあ……」
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アレクシア
特に、兄のほうを嫌っておけなかった自分のことは、自分でもどうかと思うが。
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アレクシア
一人暮らしだったはずの生活に、理由もわからないまま年上の男が一人増えて。
挙げ句、自分でもう一人、増やしてしまい。
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アレクシア
……もう一人増やしてしまったから、むしろ、気が抜けてしまったのかもしれないが。
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アレクシア
正直。今の自分の生活のことを他人に説明しろと言われたら、かなり困る。
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アレクシア
その程度に、『普通の』相手ではない。
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アレクシア
だというのに。
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アレクシア
「好き、……好き。どんな『好き』か、か……」
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アレクシア
例えば、友人。例えば、家族。
単純に『好意』と言ってつづめても、そこに違いがあるのは確かだ。
それは当然、そうだろう。
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アレクシア
これまで、言葉にして切り分けようと思ったことが、なかっただけ。
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アレクシア
……友人では、ない気がする。
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アレクシア
まずもって、兄の方を友人と呼ぶのはかなり無理がある。
彼がここにいる理由は未だにわからないが、対等な関係を築いてきたとはとても言えない。
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アレクシア
年下の小娘。
そんなふうに扱われているのを感じる。良くも悪くも。
だから余計に、あんなことを言い出すとは思っていなかったのだけれども。
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アレクシア
一方の弟の方は、一緒に暮らしているからとか、命の恩人だからとか、時折そんな事を言いながら、アレクシアにとても気を遣ってくれる。
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アレクシア
そのありがたさを、ずっと感じていた。
でも、だから、友人というのは少し、違う気が、して。
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アレクシア
たぶんわたしは、その優しさに、ずいぶん甘えていた。
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アレクシア
いや。それはきっと、彼にだけでなくて。
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アレクシア
「……甘やかされていたな」
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アレクシア
最初の頃はどうだか知らないが、それでもずいぶん前から。
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アレクシア
笑ってしまう。
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アレクシア
本当に。わたしは、あまりに至らない。
いつも、自分のことばかりで精一杯。今も、そう。
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アレクシア
それどころか、自分の気持ちだって、よくわかってもいないし。
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アレクシア
「……『好き』、か」
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アレクシア
もう一度、くちびるに乗せてみる。
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アレクシア
嫌いじゃない。……そうじゃない。
わたしはたぶん、ちゃんと彼らが好きだ。
数日前まで思っていたより、たぶん、はっきりと。
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アレクシア
いつの間にか、彼らのいる生活が当然のようになっていた。
家にいて、彼らの気配がすることに慣れていた。
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アレクシア
それを、どこか、居心地良く思うようになっていた。
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アレクシア
ようやく自分で認める。
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アレクシア
いまさらだ。
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アレクシア
でも。
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アレクシア
「…………」
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アレクシア
今の生活は、あと数日もせずに終わってしまう、かもしれない。
わたしが、答えを出したら。
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アレクシア
いや。ホワイトデーの日に、『今まで通り』は終わってしまっている。
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アレクシア
今はただ、二人が待ってくれているだけだ。
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アレクシア
どちらかを選ぶか、どちらも選ばないか。
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アレクシア
どうしたって、三人、何も変わらずにいられないのはわかっている。
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アレクシア
……それが、胸に痛い。
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アレクシア
この期に及んで、傷つきたくないと思っている自分もいる。
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アレクシア
断れば、出ていってしまうのじゃないか。
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アレクシア
そう、思ってしまう。
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アレクシア
好きだと言ってくれた相手に、その言葉を受け入れないまま、そばにいてくれとは言えない。
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アレクシア
出ていくというなら止められないし、そうでなくとも、これまで通りにそばにいることができるはずもない。
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アレクシア
何かを選ぶというのは、そういうことだ。
選ばなかったものを、手放すということ。
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アレクシア
「……手放したくないのか、わたしは……」
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アレクシア
小さく呟く。
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アレクシア
それは、なんというか。
幼児のような甘えっぷりではないだろうか。
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アレクシア
自分がそんなに子供だとは気づきたくなかった。
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アレクシア
いや、気づいてよかったのか?
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アレクシア
まあ、具体的に気づいても気づかなくても、まさか二人に揃って「行かないでくれ」とは言えないだろうが、どう考えても。
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アレクシア
「……いかないで、か」
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アレクシア
好き。好意。
……そばにいてほしい気持ち。
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アレクシア
そばにいてほしい、気持ち。
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アレクシア
「……………………」
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アレクシア
それは。
どうしてだろう。
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アレクシア
「……………………」
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アレクシア
それは、
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アレクシア
「……………………」
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アレクシア
世間一般では、それは、
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アレクシア
「……………………」
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アレクシア
特別な『好き』、というんじゃないのか、それは?
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アレクシア
好き。
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アレクシア
友人でも家族でもなくて。
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アレクシア
なのに、だれかを、すきに、なる、こと。
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アレクシア
……それを。ひとは。
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アレクシア
恋、と、ラベルするのだろうか。
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アレクシア
「………………っ、」
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アレクシア
嘘だろう。
どうかしている。
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アレクシア
どうかしているとしか、言いようがないだろ。
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アレクシア
二人。
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アレクシア
……ふたり、とも?
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アレクシア
「……そん、」
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アレクシア
そんなの。
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アレクシア
そんなの、だめに決まってるだろ。
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アレクシア
どう考えたって。
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アレクシア
だめだろう。
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アレクシア
そもそも。
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アレクシア
そもそも、普通は。
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アレクシア
特別な一人を選ぶことを、恋って、言うんじゃないのか。
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アレクシア
なら、わたしのこれは一体なんなんだ。
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アレクシア
腰を下ろしたベッドに、横向きに倒れ込む。
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アレクシア
特別な一人を選ぶのが、恋。普通はそう。
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アレクシア
そう、だと思う。
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アレクシア
選べないなら……それは、恋ではないということに、なる、のだ、ろうか。
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アレクシア
それとも、恋ってふたつできるのか?
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アレクシア
できて良いものなのか?
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アレクシア
いや、だめだろうよ。
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アレクシア
「……………………」
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アレクシア
「……………………」
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アレクシア
だとしたら。
選べないなら。
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アレクシア
それでも、二人に誠実でいようと思ったら。
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アレクシア
そのとき、わたしにできることを、考えたら。
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アレクシア
……ぎしっ、と胸が軋んだ。そんな気がした。
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アレクシア
でも、どうしようもない。
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アレクシア
傷つきたくない。
わかっていて、傷つくのは怖い。
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アレクシア
怖い、けれど。
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アレクシア
「…………『シャルル』」
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アレクシア
二人の名前。
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アレクシア
上手く呼び分けられなくて、だから口にすることも少なくて。
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アレクシア
でも、あるいは。
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アレクシア
ただ「お前」と呼びかけて、わかってもらえることは……
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アレクシア
名前で呼ぶよりも、相手を近しく思うことだったのかもしれない。
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アレクシア
そんなことにも、いまさら気づく。
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アレクシア
……シャルル。
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アレクシア
お前たちのことが、すきだよ。
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アレクシア
だから、あと少しだけ。
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アレクシア
覚悟が決まるまで。
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アレクシア
もう少しだけでいいから、そばにいて。