アレクシア
歩き慣れない履物に、ほんの時折、足音を乱しながら。
アレクシア
ゆるやかに、人混みの中を泳ぐように進む。
アレクシア
どこへ行こうと決めきったわけでなく、その歩み自体を楽しんでいる。
シャルル:兄
知らぬ人々がそこかしこで楽しげな雑談を交わしている。
シャルル:兄
鉄板で粉ものが焼ける音。
パチンコの玉を弾く音。
くじ屋の鐘の音。
シャルル:弟
提灯と屋台の明かりが遠くまで並んで、外れると、暗い影がおちる。
シャルル:弟
戦利品を堪能する子供らに、酒を飲み交わす大人らに。
シャルル:弟
「この辺って結構子供とかもいたんだな」
アレクシア
時折傍らを通り過ぎていく子供たちを、少しよけたりしながら。
アレクシア
「うちからだと、小学校なんかは遠いからな……」
シャルル:弟
「そういや、入口のとこに結構自転車も停まってたな」
シャルル:兄
「このくらいの規模だと、そう迷子にもならないでしょうしね」
アレクシア
「子供だけで来てるようなのも、結構いそうだからな」
アレクシア
「小遣いを握りしめて、目をきらきらさせてるようなのが」
シャルル:兄
「アレクシアはお祭りはよく行かれたんですか?」
アレクシア
「ん?……うーん……まあ、子供の頃は普通に……」
シャルル:兄
「ふふ……では、懐かしいものでもあるのでしょう」
シャルル:兄
「やってみます?」と、視線の先を追う。
アレクシア
「……やりたいのはお前じゃないのか?」
アレクシア
「あんまり力を入れると、あっさり割れるからな」
シャルル:兄
「それは、なかなかコツがいりそうですね」
アレクシア
「二人でやってみればいいんじゃないのか」
アレクシア
「……もう十年以上やったことないぞ。期待するなよ」
アレクシア
早速しゃがみ込んで、かりかりと削りだす。
シャルル:弟
隣でアレクシアが始めるのを見て。
別の場所で子どもたちがやっているのを見て、手をつける。
シャルル:弟
少し力を入れたら割れてしまいそうで、でも、なかなかもどかしい。
シャルル:兄
細かいところを分断する作業からやっていく。
シャルル:兄
「この、本体が割れなければいいんですよね」
シャルル:兄
細かい部分に新たな溝を作り、外部をぱきりと切り離す。
シャルル:弟
やっている隣で、針先を当てた部分から傘の柄がポキリと折れる
アレクシア
「まあ、あんまり簡単に抜けたら商売にならんだろ」
シャルル:兄
言いながら、ウサギの首と脚の間の3角を削る。
シャルル:弟
割ってしまったので二人の様子を見ている。
シャルル:兄
2d6+1>=6 (2D6+1>=6) > 4[2,2]+1 > 5 > 失敗
アレクシア
2d6+1>=6 (2D6+1>=6) > 7[5,2]+1 > 8 > 成功
アレクシア
「お前は器用だから、簡単なのなら抜けるんじゃないのか」
シャルル:兄
「んふふ……惜しかったですからねぇ」
シャルル:兄
「金魚だったら掬える気がするんですが」
アレクシア
「まあ、そもそも掬っても持ち帰らずに返すやつもいるからな」
アレクシア
「やっぱり、飼うとなるとちょっと大変だからな……」
シャルル:弟
「金魚って結構デカくなるらしいしな」
シャルル:弟
「昔はカメなんかもやってたらしいけど」
シャルル:兄
「100年とか生きるのではないですか?」
シャルル:兄
「案外生きるかもしれませんよ、ガラパゴスゾウガメとか……」
シャルル:兄
「30とか50年でも大変ですよねぇ」
シャルル:弟
「もう兄弟みたいだよな、それだけ生きると」
アレクシア
「そもそも、五十年経った先の自分ってあんまり想像つかないな……」
シャルル:兄
「50年……というと、70代ですね」
アレクシア
こいつ性格変わらなそうだな……と思っている。
アレクシア
「……まあ、今の七十歳って元気だよな、全体的に」
アレクシア
「……まあ、こいつが死にそうにないというのはわかるな……」
シャルル:兄
「生きていてほしいって、ごまかさなくてもいいんですよ」
シャルル:兄
「このお祭りも、どのくらいやっているんでしょうね」
シャルル:兄
「50年後もやっているのでしょうか」
シャルル:兄
「今日の晩御飯はサボっちゃいましょうか?」
アレクシア
「お好み焼きとか、たこ焼きとか……あとはベビーカステラとか?」
アレクシア
「これ、綺麗だよな。あんまり派手じゃなくて」
アレクシア
「そもそも、浴衣なんて着たことほとんどなかったけどな……」
アレクシア
「……まあ、見えたらちょっと……結構、びっくりはするだろうな……」
シャルル:弟
「一周回ってペイントに見えないこともないが……」
アレクシア
「……なんというか、……いや、別に悪いというわけじゃないんだが」
アレクシア
「見せないようにしてるんだと思っていたが」
シャルル:兄
「でも、まあ、最近は珍しくありませんし……」
シャルル:兄
「もう少しおしゃれな方が好みですか?」
シャルル:兄
「外側ならいくらでも繕えますからね」
シャルル:兄
「本当は内側もしたかったんですけれど」
シャルル:兄
「あっ、ほら。あの辺りにお好み焼きの屋台がいくつかあるようですよ」
アレクシア
仕方がないので、今はごまかされてやるか……。
アレクシア
ほんの一瞬、考えて。それから手を差し出す。
アレクシア
いや、冷静に考えると非常に恥ずかしい気がするが……
シャルル:兄
一緒にいられる穏やかな時間が、今は何より大切だ。
シャルル:弟
「人が多いの、大変かもって思ったけど」
シャルル:兄
「そう遠くないのもいいですね。ああ……疲れたら言ってくださいね」
シャルル:弟
「そうだな……結構なれるまで大変だ」
シャルル:兄
「足に引っ掛けるようにすると良いらしいですよ」
アレクシア
「お前らは特にな……上背もあるし……」
アレクシア
頭ひとつぶん背の高い二人を交互に見上げる。
アレクシア
「そういえば、花火大会って行った覚えがないな……」
アレクシア
「地元のお祭りと違って、子供だけで気軽に行けるわけじゃないからかな……」
シャルル:弟
「ここより人多いだろうし、ちょっと離れて見えるとこでもいいかもな」
シャルル:兄
「日付わかったら予約取りましょうか」
シャルル:弟
繋いだ手は暖かく、たしかにそこにいると感じさせてくれる。
アレクシア
細く薄い手のひらを包む、優しい手の感触。
アレクシア
大切にしてもらっている。身に余るほど。
アレクシア
その嬉しさと怖さを、こういうとき、ふと思い出す。
アレクシア
ずっと、と言えない。けれど、そう願っている。
*
今日、祭りが終わっても。その先に、また次の未来を小さく約束する。