街道沿いで出没の話があった。
人喰い三月を2体倒した。
西の岩場に出るという噂を聞いて駆けつけた。
猫の亡者を倒した。
じゃがいもの亡者の収穫をした。じゃがいもパーティ! こんなに食べたのいつぶりだろう。
たびたび村を襲ってくる敵を討ってほしいという話を聞いて、海の方に向かった。
牡蠣の亡者を倒した。美味しかった。最近美味しいものばかり食べてる。
少し離れた村の方で、末裔たちに酷いことをして暮らしている救世主の話を聞いた。
末裔たちだけで、ここまで逃げてきたらしい。
5人、ボロボロだった。元々は20人いたらしい。道中の亡者にやられたそうだ。
私はその救世主を討つことにした。
末裔を奴隷のように扱う救世主を倒した。
みんなもういっぱい傷ついているのに、よかった、って喜んでくれた。
救世主を殺して喜んでもらえるのは初めてだった。
こういう救世主ばっかりだったらいいのに。矛盾してるけど。
とにかく私は、いいことをしたんだと思う。きっと。
ミリアムさんが望んでたのは、こういうことだと思う。
それなら生きていける。
しばらく村の復興の手伝いをしてたけど、ひと段落して出ることにした。辺りに亡者もほとんどいなくなった。元の街に戻るより、旅をすることにした。しばらくは村に来た隊商の護衛をして、色々と見て回ろうと思う。
振り子亡者を倒した。多分振り子亡者だと思う。そうとしか言えない。見てると眠くなってきて危なかった。操られた商人に刺されるところだった。
食べれない亡者だとハズレだなって思っていたんだけど、金属一つにしても結構な値段で売れるらしい。
4人組の救世主としばらく同行。陽気で楽しい人たちだった。口笛を教えてもらった。
村が蟻の群れを従える救世主に襲われていた。2組に分かれて倒す。煙幕の力に何度も助けられた。
一緒に戦うというのはいいな、とも思ったけれど、まだ誰かと旅する気持ちにはならない。
4人はまだ私と行っても構わないという感じだったけれど、別れることにした。
日程に予定があるから、街道を外れてみようと思う。
三月兎の末裔にナンパされた。チェシャ猫の末裔だと思ったのだろうか。丁寧に断った。
この辺りまでくると救世主自体が珍しいみたいで、すごく歓迎された。のどかな村だ。
特に何もしてないのにあんまりにもちやほやされるから、手持ち無沙汰で亡者退治をたくさんしてしまった。そしたら余計歓迎されてしまって大変だった。
ドードーの末裔が連れて行ってほしいと頼み込んできたが断った。誰かと二人で旅なんてする気にならないし、命を預かりたいと思わない。
ドードーの末裔がついてきちゃった。名前はオリバー。亡者退治をしたとはいえ、末裔が一人で荒野を歩いていい道理はない。亡者に会わなかったのは運が良かったせいだと説教した。とはいえ、追い返すわけにはいかない。ちゃんと送り届けないと。
そう思っていたのに、こんなときに限って亡者に見つかる。オリバーにコインを渡して、どうにか敵を倒した。正直まったく戦えるタイプじゃなかったけれど、それでもオリバーが手伝ってくれたから助かったところもある。
あれこれ熱心に語ってくるのが、テオルさんを思い出す。
◆オリバー
末裔は救世主じゃない。救世主の責務のために殺すことはないし、殺すことはきっとない。そう思って、同行を許すことにした。回復する力、盾になる力。ありがたくないといえば嘘になる。
でも正直、責任を感じる。いつ死ぬのかわからない旅になる。二人で旅をするのはやっぱりまだ怖い。そんな気も知らないで、私に懐いている。連れて行くからには、あんまり不安な顔をしても仕方がない、と思った。
お茶会と裁判、それから旅について、オリバーに指導しながら歩く。いちいち大げさに驚いたり感心したりする。いつもにこにこしていて、わかってないのにわかりましたって元気に挨拶してくる。もっとしっかりしてほしい。大丈夫なのかな。
オリバーと二人で歩いているところを救世主に襲われた。チェシャ猫とドードーが歩いていると思ったのだろう。ただの末裔だと思って襲いかかってきたのなら、こっちも容赦なくやれる。オリバーにとっては、はじめての救世主とのお茶会と裁判。オリバーは救世主を素晴らしいものだと思っているようだけれど、そんなことは全然ない。こんな風に弱者を傷つけることに容赦がなかったりする。
そう話したら、そうしない私は特別なんだと言い始める始末。全然わかっていない。2対1で相手を容赦なく傷つけたのはこっちの方だ。救世主にいいも悪いもない。みんな人殺しだ。
そこまで言うと、大声で泣き出してしまった。私より大きなからだをしてるくせに泣き虫だ。
跳び箱の亡者を倒した。オリバーに跳び箱の説明をするのが大変だった。
『冷血の税務官』と呼ばれる救世主の噂を聞いた。この近くで積極的に裁判している救世主らしい。
訪れた村で、急に亡者狩りを頼まれてしまった。脅威度5の救世主が討伐に失敗した亡者。倒せるわけがない、という話をしたら、鏡写しで自分自身と戦わせてくる亡者らしい。勝てる気は正直しなかったけれど、放っておけば村が壊滅してしまうのは確かだった。村の人達と話し合って、死の卓球裁判で倒すことにした。
鏡の亡者に姿を映して、アリスの訴状を叩きつける。
それからはオリバーとひたすら卓球の特訓。
ちょっと、オリバーがどうしようもないくらい卓球が下手で、失敗かと思った。
どうにか亡者を倒すことはできたのだけれど、まぐれで勝ちだったと思う。
ギリギリの戦いだったのに、オリバーは戦いより毎回こういう裁判がいいな、なんて呑気なことを言う。
なんとか撃破して、村でちょっとした英雄扱いになった。
オリバーはついてきてよかったなあ、なんて言う。
星条旗ビキニの亡者を倒した。水着の姿になったところで私はなんともないのに、オリバーが騒いで大変だった。オリバーに星条旗ビキニ全然似合ってなかったな。星条旗ビキニって何? って言われても答えられなかった。何?
巨大な蟹の亡者を倒した。美味しかった。
イカフライとイカリングの亡者を倒した。あつあつでサクサクな衣に体当たりされると、熱い衣の破片が突き刺さる強敵だった。美味しかった。そのうえ、いつどこから飛来してくるかわからない。お茶会をすごく邪魔されてオリバーがぷんぷんしてた。
カレーの亡者とカツの亡者が同時に襲ってきて、大変だった。美味しかった。
オリバーが同時に食べると美味しいよ! と新発見を嬉しそうに伝えてきて、なんて言えばいいかわからなかった。
なんで揚げ物の亡者ばっかりでてくるのかよくわからない。
イカフライ、カツの亡者を倒してきたけれど、風の強い日にはコロッケの亡者も出ると聞いた。なんで?
私たちは風の強い日を待つことにした。
木々がちぎれるばかりに風の強い日。コロッケの亡者にうってつけの日だ。
噂通りに現れたコロッケの亡者。本当に出た! といっぱい騒いだ。
これまでの揚げ物の亡者たちよりずっとカラッとあがっていて、強かった。美味しかった。
責務の期限まであと2日というところで、どうにか救世主と会えた。
特に好戦的な感じの救世主じゃなかったけれど、向こうにも責務がある。はっきりとした殺意を示してきた。感情を欠落した救世主と、帽子屋の末裔のペアで、文字と模様の書かれたお札で何度も攻撃を防がれた。大きな一撃を帽子屋の末裔に覆されたときは負けるかと思ったが、オリバーが防いでくれた。
倒した二人を埋葬している最中にオリバーがなにかしていたようだけれど、わからない。美人の救世主だったから、見とれていたのだろうか。
野球拳の村に来た。何事かと思った。
歌ったり踊ったりしながら、じゃんけんに負けたら服を脱ぐ宴会芸……を儀式にしている村。
じゃんけんでは私の方が負けていたのだけれど、突然オリバーが叫びだして、全部脱ぎ始めてびっくりした。村長が満足気に頷いていて、全然意味がわからなかった。
それでも、堕落の国で一番ふかふかしたベッドで今日記を書いてる。何もかも信じられない。
オリバーも理解が追いついていないらしく、半ば昏倒するように寝込んでしまった。
小さな名もないのどかな村。
少しオリバーの村に似ているかもしれない。
あまり人が来ないらしく、私達が客だとわかると、宿屋の白兎の末裔があわてて部屋掃除をしはじめた。
救世主だと騒がれるのもオリバー一人で十分なので、よく旅なんかできる、という話をやんわりと流した。
5人組の救世主を見かける。責務の期限が近くなってきているがけれど、勝てるわけがない。5人。確かに強いのだろうけど、よくやっていけるな、と思う。5人もいれば、途中どこかでもめごとが起きそうだし、救世主の揉めごとはどうしたって裁判になるだろう。
次の相手はまたペアだった。今回も向こうも期日が迫ってるペア。お茶会を通じて、世界を救うという希望を胸にいだいてることがよくわかった。オリバーは戸惑っていた。どうにか協力する手段はないのかな、なんて的はずれなことを言っていた。でも救世主と旅するならわからないといけないことだと思う。そういう話をしたら、オリバーは、優しいんですね、と言った。泣いていた。思わずその手を握ってしまった。血に濡れてる私の手を、やさしい手だと言っていた。
初めの方は全然だったけれど、オリバーはオリバーなりにどんどん裁判に慣れていく。よく頑張ってると思う。色々なことを知っていく。昨日のオリバーは見てられなかった。見られるのに耐えられなかった。それでも私のことを、いい救世主だと思ってる。私が本当に世界を救うんだって思っている。救世主なんて別に大したものじゃない。辛いから、色んなことを忘れたいから、末裔を助けてるだけ。
オリバーを帰したほうがいいのかもしれない。
今でも、隣で寝てると、殺してしまいそうになる。身体に猟奇が染み付いている。
どんなにいい救世主でも、会えば殺すことを考えている。オリバーにはわからない。
私は私が許せなくて、気が狂いそうだ。
アスパラガスの亡者を倒した。勢いよく生えてくるアスパラガスにお腹を貫かれたときはだめかと思った。先端が膨らんでいるから抜けづらかった。美味しかった。
オリバーの村の方に向かっている。オリバーは全然気が付かない。
この世界に来たばかりの救世主と出会う。女の子の救世主。みすぼらしい格好。名前はムスクルス。右も左もわからないってかんじだった。放っておくわけにはいかない。オリバーが頑張って色々なことを教えようとするんだけど、うまく説明できないので私がほとんど教えることになった。大変だから、一度に全部は教えないで、小出しにしていった。
ムスクルスは一度も空を見たことがない子で、地下の世界から来たらしい。曇り空でも大喜びしていた。私にとっては堕落の国はひどく荒れた世界だけれど、その子にとっては豊かな世界らしかった。世界のことがわかると、楽しそうにあれはなに、あれはなに、と聞いてくる。饐えたワインの臭いの人喰い三月の干し肉も、美味しい美味しいって言って食べた。
ムスクルスに救世主の責務の話をした。
話すたびに、その目が曇るのがわかった。その気持ちが私にはよく分かる。
こんな子供が人を殺さないといけないなんて、間違っていると思う。
今日はとっておきの食材を使って、オムレツを作って食べた。
ムスクルスは物覚えがよくて、すぐに亡者狩りの手伝いをするようになった。
器用で、撹乱させるのが得意なタイプ。裁判での3人の相性は悪くない、とは思う。
前に訪れた村が壊滅してた。それなりにちゃんとした町でも、亡者一体に滅ぼされてしまうことはよくある。できる限りの亡者を倒した。2人に少し無理させてしまったけど、そうしないわけにはいかなかった。村があったところまで近づくことはできなかった。
オリバーを帰すことを考えていたけれど、人があまりくるような場所ではないところに村があるのを考えると、どこかで責務を果たしたほうがいい。あまり余裕はない。
油断してた。
本当に好戦的な救世主は、夜、宿屋に寝ていても襲ってくる。完全に不意打ちだった。深手を負った。左手が凍って動かない。敵は冷血の税務官ロスチスラフ。格上の救世主だ。
今はお茶会で、オリバー、ムスクルスと隠れている。
村人の悲鳴が聞こえる。
ゆっくり時間をかけて捕まえた末裔を凍らせて、隠れた私たちを誘き出そうとしている。
いかないわけにはいかない。
ごめんなさい。
生きている。
また死ななかった。
コインを十枚だけ懐に残して残りを遠くに投げ、私は崖から跳んだ。
それができるのは、ムスクルスが殺されたからだ。
救世主の責務は裁判で1人でも死ねばいい。だから私は逃げられた。
こうなる前からわかっていた。
ムスクルスが死ぬことで生き残ることを考えていた。
ロスチスラフを倒せなかったら、そうするしかないって。
それはケヴァが私にした選択と全く同じことだった。
手が冷たい。オリバーがやさしい手と言った手。両方の腕が凍りついて、それが解けて動くようになったあとも、ずっと手は冷たいままだった。鱗と鰭のついたその姿は、心の一部分が亡くなった証拠だった。
ロスチスラフの言っていた言葉が忘れられない。
生きているものは死ぬべきなのだ。
そのとおりなのかもしれない。なんで私は生きているんだろう。
オリバーを村まで連れて行って、別れた。