井上 フェルナンド
昨晩のことなどまるで何も知らずに、人々は通りを行き交う。
井上 フェルナンド
貯水塔の上でストラをたなびかせて、街を見下ろしている。
井上 フェルナンド
結構な量の包帯もたなびいている。
沢城 しぐれ
「あんたが何か気に入ることなんて、もともとめったにないでしょ」
井上 フェルナンド
「魔女を殺した夜の静寂だけが、狩人のすりきれた心を癒す」
井上 フェルナンド
「沢城しぐれ。この世界には――」
井上 フェルナンド
「WindowsのパソコンとMacのパソコンがあるらしい」
沢城 しぐれ
「いや、あまりにも当然のことを言い出すから何事かと思った」
沢城 しぐれ
「小学生でも知ってるだろ、それは……」
井上 フェルナンド
「しかしいずれも大企業によるもの……」
井上 フェルナンド
「間違いなく、吸血鬼どもの息が掛かったものだろう……」
井上 フェルナンド
「対モンスター用に結界を施したパソコンでなければならないだろうな」
井上 フェルナンド
「調べれば専用のソフトウェアがあるらしい」
井上 フェルナンド
「ノートンか、MaAfeeか、カスペルスキーか……」
沢城 しぐれ
「バベルネットの馬鹿製を使ってるな、アタシは……」
沢城 しぐれ
「じゃあ後で送ってやるよ、なんか……いろいろ……」
井上 フェルナンド
「それで、どうなんだ。街の様子は」
沢城 しぐれ
「まーな。拾ってた情報のうち、未回復の案件はなし」
沢城 しぐれ
「この町もまたうるさくなったってわけ」
井上 フェルナンド
「空はくすみ、地は汚れ、海は濁り、人は過剰に増え、神を忘れ、信じることを手放し……」
井上 フェルナンド
「しかし魔女の齎す不自然な静寂よりはマシといえるだろう」
沢城 しぐれ
「へいへい。お祝いに一曲歌ってやろうか?」
井上 フェルナンド
「おれに音楽のよしあしなどわからないが……」
井上 フェルナンド
「お前が歌で魔女を退けるというのなら、その歌にも意味はある……」
沢城 しぐれ
軽く胸に手を当てて、芝居がかって一礼。
沢城 しぐれ
Vaga luna, che inargenti queste rive e questi fiori
沢城 しぐれ
ed inspiri agli elementi il linguaggio dell'amor……
沢城 しぐれ
――優雅な月よ 汝は銀色に輝かせる
この岸辺や この花々を
沢城 しぐれ
そして万物に与える
愛を語る言葉を――
井上 フェルナンド
フェルナンドの他の誰が聴くこともない歌声に、
井上 フェルナンド
「魔を退けるお前の歌が及ぶ限りは、そこに魔女はいないということになる」
井上 フェルナンド
「お前は出来る限りたくさん歌い続けるといい」
井上 フェルナンド
杭は危ないところだからな……。
井上 フェルナンド
「……では、おれは見回りに出るとしよう」
井上 フェルナンド
「魔女はいついかなる時も現れる。狩人に与えられる休息はわずかなもの」
井上 フェルナンド
「すべての魔女を殺すか、死して天に迎え入れられるまで、真の休息は訪れない」
井上 フェルナンド
「ふん、やすやすと死ぬつもりはない」
井上 フェルナンド
「井上家は最も由緒正しき魔女狩人の名家……」
井上 フェルナンド
「お前も死ぬな。お前もまた、歌い続けなければならないのだからな」
井上 フェルナンド
屋上から無駄に飛び降り、雑踏へ。
GM
はるか頭上から、歌うような声がフェルナンドの背を押す。
GM
今宵ひとつ月が欠け、またわずか、闇が昏くなる。
津々土 つづみ
夜。というか、まだギリギリ夕方といったところだろうか。
津々土 つづみ
コンビニのレジに並びながら、ぼーっと窓の外を見ている。
津々土 つづみ
自分の番が来て、台に適当なお菓子や飲み物を置いていく。
そうしていると、ふと視界にあるものが映る。
津々土 つづみ
「…あー、あと。からあげ棒ひとつ」
津々土 つづみ
妹にいつも持たされているエコバッグに荷物を詰め、からあげ棒を片手にコンビニを出る。
津々土 つづみ
いつも背負っていたギターケースは、今はない。
津々土 つづみ
槌も鎖も砕けてしまったため、専門の人間に修理…というかもう一から作り直してもらっている。
津々土 つづみ
「しばらくは私も一般人ってわけだ」
どことなく、気が楽だ。
津々土 つづみ
スマホを取り出し、『今日は早く帰れそう』と妹にL○NEをする。
津々土 つづみ
最後のからあげをくわえて、串をゴミ箱に捨てる。さすがに杭として使う気はない。
津々土 つづみ
人混みを眺めながら、小さくつぶやく。
「…まったく、騒がしい街だ」
津々土 つづみ
「…はぁ」
あからさまに嫌な表情を浮かべながら、ため息を吐く。
GM
「おめでとう! つづみんはわたしにお寿司を奢る権利を獲得しました!」
GM
ちゃちゃらちゃーん!と口でファンファーレを鳴らしてくる。
津々土 つづみ
「え…?…………あ、あー。そういやそうだった」
完全に忘れていた顔
津々土 つづみ
「んー…、まあ別に奢るのはいいんだけど。また今度ね」
津々土 つづみ
「いや、今夜は"ない"。…ないのが予定、的な?」
津々土 つづみ
「これから先、こうやってなんでもない日を過ごせるかなんてわからないでしょ。だからまあ、たまにはね」
津々土 つづみ
「まあ、あとは予定も一応ある。明日だけど」
GM
「そういうのないと、だめんなっちゃうからね」
津々土 つづみ
「じゃあ、ついでにもひとつ予定を立てとこうか。寿司の」
津々土 つづみ
「…わかったわかった。もうこの際くっそ高い寿司でもいいや、店の予約しておいてよ」
津々土 つづみ
「奢ってやるんだから、ちゃんとした店を探しといて」
GM
「むかし八角宗家のおエライさんと行ったすげーとこが……」
津々土 つづみ
「あんたも結構すごいとこと関係持ってるよね」
津々土 つづみ
「まあでも、それならハズレはないか…。楽しみにしとこ」
津々土 つづみ
「よろしく」
そう言ってさっき買った適当な飲み物を放り投げる。
津々土 つづみ
「じゃ、しばらくは狩人おやすみだから。今日さっさと帰ってさっさと寝ることにするよ」
手を振る
GM
次の日のことを、その次の日のことを、……未来を思う。
庭 陶子
庭に並べたテラスにテーブルクロスをひく。
今日はお茶に誘った、あの日の面々が遊びに来てくれる日。
庭 陶子
玄関のチャイムが鳴ると庭からそちらへぱたぱたと駆けてゆく。
井上 フェルナンド
何やら植物のにおいがする……儀式のための薬を調合しているのか?
沢城 しぐれ
「井上、落ち着けよ……」 後ろからやってきて呆れた声を出す。
井上 フェルナンド
「……本日はお招き頂きどうもありがとうございます」
庭 陶子
自慢の庭にはハーブや花々が咲いている。
パセリ、セージ、ローズマリー、タイム。
井上 フェルナンド
「こちら、土産の聖水です。気になるところに撒いていただければ」
沢城 しぐれ
「どーも。アタシからも、これ、つまらないもんだけど」
沢城 しぐれ
なんかいいかんじのゼリーの詰め合わせ。
庭 陶子
「わ~、うれしい。氷水で冷やしてみんなで食べましょ」
津々土 つづみ
そうしていると、スマホ片手にきょろきょろしてるつづみが家の前を通る。
津々土 つづみ
表札を見て、スマホもっかい確認して…門覗き込んで。
津々土 つづみ
「あ、いえっ。こちらこそ、今日はありがとうございます。誘って頂いて」
庭 陶子
「座って座って、今焼き菓子出しちゃうから」
津々土 つづみ
「ありがとうございます。あ、これお菓子とか…です」
紙袋を差し出す。
庭 陶子
「わ~!素敵!とっておきのお皿だしちゃおう!」
津々土 つづみ
こういう時何がいいのかわからなかったため、いろんなお店をめちゃくちゃ回った。
津々土 つづみ
聖水、そこらへんに売ってないだろ。
庭 陶子
大きなポットを手にぱたぱたと動き回って、ようやく席につく。
席には焼き菓子とお土産のお菓子やゼリーに、庭で採れたハーブティーが並ぶ。
井上 フェルナンド
くんくん、くんくんくんくん、くんくん。
庭 陶子
「今日は来てくれてありがとう、は~お客さんなんて久しぶり」
津々土 つづみ
「いえ、こちらこそ…ありがとうございます」
背筋がぴんと伸びてる
庭 陶子
「今日集まってもらったのはね、この自慢の庭を見てもらいた~い、お茶した~いってのもあったんだけど」
津々土 つづみ
「お願い…。聞きます」
ちょっと前のめりになる
庭 陶子
「えっとね、私……近いうちにモンスター被害遺族に聖印の作り方を教える教室をはじめようと思ってて」
庭 陶子
「もちろん、こっそりね!なんか……ほら、フェルナンド君も言ってたけど。みんなが戦わなきゃって思うのも大事だなって思って」
井上 フェルナンド
フェルナンドもにっこりです(しない
庭 陶子
「少しでも人生のやりがいみたいなのも出来たらいいな、と思うし……聖印づくりでできたお金を色んな支援にあてれたらなあ……って」
庭 陶子
「だから、そういう相談があったら私に繋いでほしいな、って……お願い!」
沢城 しぐれ
ふうーん、という顔でハーブティーを啜る。
井上 フェルナンド
「前線で戦士として戦わずとも……という話だったな」
井上 フェルナンド
「確かに、そういう戦い方もある、か……」
庭 陶子
「それこそパンフレット、みたいな一歩ね」
津々土 つづみ
「良いと思います、それ。…まあ、私個人は知り合いが少ないんでそういうのが得意そうな奴に伝えておきます」
今度寿司食いに行く時にでも
沢城 しぐれ
「なんか場所取るのに、美麗派のカフェとか借りられるようにしたげよっか?」
井上 フェルナンド
「井上家からも資材の援助をしよう」
井上 フェルナンド
「おれの伝手があるのは……不虞になった狩人だな」
沢城 しぐれ
「うちの師匠はめーっちゃ顔広いから、いい感じに言っとくよ」
沢城 しぐれ
「そろそろほとぼりも冷めた頃だし……」
津々土 つづみ
「え、みんな結構そういう伝手あるの?ないの私だけ?」
井上 フェルナンド
「ならばお前も参加すればよいだろう」
庭 陶子
「お茶のみに来たついでにでも参加してって~」
津々土 つづみ
「えっ、そりゃ参加していいんでしたら是非。…でも、できるかな」うーん
津々土 つづみ
「それなら、予定がない時は参加させてもらいます」
庭 陶子
「ひとりで立ち向かわなきゃいけない人が、少しでも少なくなればいいな……」
津々土 つづみ
よし、聖印に関することもあいつに聞かなきゃな…と呟きながらお茶を飲む。
「あ、美味しい…」
GM
暖かな日差しの下で、やがて来る夜に負けないために。
GM
温かな日常の中で、夜の深みで負った傷を、少しでもマシにするために。
GM
忙しい日々をゆく街が、ざわざわ、がやがや、立てる音。
GM
喋り声。流れる音楽、歌う声。車のブレーキ。雨音、虫の音、風切り音。
GM
ブラッドムーン / ギルティウィッチーズ 『静寂に愛』