GM
飢えと乾きと亡者と……ときには救世主に蝕まれるこの国で、墓地にはたくさんの、本当にたくさんの末裔が眠っている。
マオマオ
「ええ……、ええ、すみません、ありがとうございます」
マオマオ
墓守は気前よさそうに手を振って、どこかに散歩に行ってしまった。
シュエシュエ
呼ばれれば、やや離れた場所から足を引きずりながら女が寄ってくる。
マオマオ
貧しい末裔の、墓守なんて外れ仕事。
ちょっと小銭を握らせてやれば、大体は親切にしてくれる。
マオマオ
寄ってきた女には目もくれず、適当に墓標を読み上げていく。
マオマオ
「トマス、ヘンリー、ジャック、男ばっかりだな」
シュエシュエ
「堕落の国のお墓は掘り起こしやすくて良いですネ!」
シュエシュエ
真似をするようにかく、と首を傾げて横から墓を覗き込む。
シュエシュエ
ノ―モーションの拳にそのまま傾いで、二発、三発。
シュエシュエ
「してないでス!してないでス!シュエの勘違イ!」
マオマオ
「まったく、シュエシュエは慌てん坊だなぁ」
シュエシュエ
「え~ん、ごめんなさイ~。シュエ最近耳肉が詰まって……」
マオマオ
「兎だったりネズミだったりするから……」
マオマオ
ぶつくさ言いながら、墓の前を通り過ぎてゆく。
マオマオ
妻のズレかけた首には、意識を向ける様子もない。
マオマオ
「ベッキー、これは女だな。しかも石が新しい」
シュエシュエ
「公爵家の墓地には流石に入れてもらえないものネ……」
シュエシュエ
化粧の下で腐った肌がぐずついている。
シュエシュエ
腐臭を嗅ぎつけてか、羽虫が寄ってくるのをいやそうに払う。
マオマオ
包帯の下に乱暴に指を入れて、腐肉をかき回す。
マオマオ
世間話や手慰み、といった様子で、眼球が収まっていた場所をほじくり返す。
シュエシュエ
どろどろ溶けた目玉がその指を汚す。それを左目が気恥ずかしげに見る。
シュエシュエ
キョンシーの術師たる道士のいない堕落の国で、シュエシュエの身体を保つにはコインの力だけでは叶わない。
シュエシュエ
”パーツ”を定期的に取り換えないことには、こうして腐っていくばかり。
シュエシュエ
化粧で誤魔化しきれない腐敗した何かの汁が包帯に滲む。
マオマオ
「首から上は、特に注意しないといけないからな」
マオマオ
「顔や頭の中身まで変わったら、もう誰なのかってなるからな」
シュエシュエ
触られると、動いていないはずの心臓がどきどき動いている気がする。
シュエシュエ
「……顔はもっと可愛いのと換えてもいいですヨ?」
マオマオ
「頭そのままで顔だけ変えるの、絶対めんどくせぇだろうが」
シュエシュエ
「でもでも、こっち来てからシュエずいぶん顔が腐っテ~」
マオマオ
「自分の怠慢を棚に上げて、もっといい顔と取り替えろっていうのか?」
シュエシュエ
「でも、心の疵の奇跡はコインの力でしか引き出せなくっテ……」
マオマオ
言いながら、髪を掴んで首を揺らしている。
シュエシュエ
引っ張られれば首はなかば取れかかり、引き攣った皮が嫌な音を立てる。
シュエシュエ
「シュエは力を引き出すのが下手デぇ……」
シュエシュエ
「だから頭も顔も腐ってるのは……シュエのせ……ッ"」
シュエシュエ
バヂン!と景気のいい音と共に、首にかかっていた抵抗の力が失われる。
マオマオ
「バカだな、シュエ。
だからこうして墓場に来て、なんとかしようとしてるんだろ」
マオマオ
「でも、お前の顔を変えるなんて、めんどくさいこと言うなよ。完全に腐り落ちるまで、使い倒してからにしよう」
マオマオ
「俺達は夫婦だから……協力し合わないとな」
シュエシュエ
蹴り飛ばされた身体は司令塔を失い、二、三歩よろめいて地面に転がった。
シュエシュエ
拾われた”頭”は申し訳なさそうに夫を見る。
マオマオ
体を蹴ったのは、なんか蹴れそうだったからで深い意味はない。
シュエシュエ
実は頭が外れても身体はけっこう動けるぞ!
シュエシュエ
どんなにバラバラになっても、腐っても、不思議と動くからだ。
考えて、話せる頭。
シュエシュエ
使いこなせば相当なことが出来る筈だが、生憎この女には才覚というものがない。
シュエシュエ
ただ夫婦、という言葉にわずかに夢見るように無事なほうの目を細める。
シュエシュエ
「マオさンのためになら、シュエがんばりまス」
シュエシュエ
少し離れたところで起き上がった身体が両手を伸ばす。
マオマオ
腐った体の、夢見る乙女。
どこにもいない、たった一人の妻。
大事な大事な存在。のはずだが。
マオマオ
伸ばされた両手には目もくれず、墓石の方に向き合った。
シュエシュエ
身体の方には目が無いので当然キャッチできない。身体が慌てて追いかける。
シュエシュエ
なんとか拾って、とりあえずお留守になっていた首に頭を乗せた。
GM
誠に残念なことがら、小金で買った時間は短い!
マオマオ
2D6+4 (2D6+4) > 8[5,3]+4 > 12
マオマオ
釘で固く閉ざされた棺は、素手で明けられるものではない。
シュエシュエ
ぐらついた頭を片手で押さえながら、言われた通りに棺に片手を掛ける。
シュエシュエ
痛みを厭わない身体は、爪が剥がれるのも骨が軋むのも構わずフタを持ち上げる。
マオマオ
この便利な妻は、丁寧に埋葬された棺だって、缶切りのように開けられる。
シュエシュエ
死んだ末裔の着せられる粗末なぼろきれ。
シュエシュエ
命あるもの皆亡者になりかねない堕落の国でも、立派にウジは湧いている。
マオマオ
「もう少し肉が残っていれば、いい脚なんだけどな」
マオマオ
死者を娶った男は、ウジを見慣れている。触り慣れている。
マオマオ
死体のぐずぐずの太腿をいやらしく撫でた。
GM
ベッキーの隣はイザベラ。これもまあまあ新しい石。
シュエシュエ
「この辺りは比較的治安は良イって昨日の宿の人は言ってたケド……」
シュエシュエ
堕落の国じゃなくたって、そう珍しいことでもない。
シュエシュエ
それでも少し痛ましそうに棺の蓋を撫でる。
マオマオ
* 距離を測る Joker
アピール sQ
マオマオ
2D6+4 判定しちゃうぞ (2D6+4) > 9[5,4]+4 > 13
マオマオ
興味なさそうに、適当に蓋をもどして次の墓へ。
GM
隣はアレン、その隣は……読めないな。でも読めないくらい古いってことは、二人の目的には関係ない。
マオマオ
「ブリジットって名前もいい。多分金髪の乳がでかい女だ」
マオマオ
適当なことを言いながら、また墓を荒らす。
シュエシュエ
自分の胸を見た。まあまああると思う。
マオマオ
腐ったら、腐っていないものと取り替えるつもりだ。
GM
ちょっと小柄。でも耳は人間と同じ形をしている。
シュエシュエ
*アピールd8 距離を測る効果で+1
シュエシュエ
2D6+3+1 (2D6+3+1) > 8[5,3]+3+1 > 12
シュエシュエ
比較的新しい。藁の詰められた耳を引っ張る。
マオマオ
懐からナイフを取り出して、トカゲの末裔の耳を切り取る。
マオマオ
家族が共に埋葬したと思われる、枯れた花が散った。
マオマオ
耳をシュエシュエに当てて、サイズ感を確かめる。
シュエシュエ
花なんてこの辺りでは珍しいだろうに、きっと愛されていたのだろう。
シュエシュエ
耳飾りを試すときのように目を閉じて、大人しく耳を差し出す。
シュエシュエ
渡された耳をまるで大事なもののように懐にしまう。
マオマオ
耳の他に失敬できるパーツがないか簡単に確認して、蓋を閉じた。
マオマオ
2D6+4 (2D6+4) > 7[3,4]+4 > 11
マオマオ
時計を見つつ、少し疲れてきたので次の墓はシュエシュエに任せる。
GM
ふたつみっつ古い墓があり、その隣はクリストファー。
マオマオ
「クリストファー……、クリストファー・ロビンだから、男か……?」
マオマオ
ちょっと自信はなかったが、はっきりしない墓を暴くのも面倒だ。先にジェシカの方にしよう。
シュエシュエ
対して疲れのない身体。軽々掘っては開ける。
マオマオ
自信がないところに突っ込まれたら、そりゃあ殴らなきゃ、となる。
シュエシュエ
シュエとしてはむしろ全部をやらせないほうが不思議なのだが――
GM
さて、ジェシカ。これは帽子屋かな。シルクハットが一緒に埋葬されている。
シュエシュエ
2D6+3+1 (2D6+3+1) > 9[6,3]+3+1 > 13
GM
しかもジェシカはマオマオ的に、ちょっといい感じに見えるからだつき。
シュエシュエ
シルクハットを持ち上げる。ほとんど新品だ。
シュエシュエ
シュエも生えていませんが…… 尻尾……
マオマオ
妻にしっぽが生えてないから、生えてない死体を探しているのだが……
マオマオ
それはそれとして、死体の体を色々と確かめています。
マオマオ
「これはかなり当たりだな……。このまま持っていってもいいくらいだ」
シュエシュエ
どっちも死体なので、健康さは比べられない。
マオマオ
「両足は取り替えよう。こっちの方がいい」
マオマオ
足は破損の多いパーツだ。状態のいい死体があれば、積極的に交換したい。
シュエシュエ
痛みも疲れもない代わり、もちろん怪我や破損に鈍い。
シュエシュエ
放っておけばどんどん劣化するパーツ。換えておくにこしたことはないのだ。
マオマオ
「持って行って少し楽しんでからでもいいだろ」
シュエシュエ
「どうせシュエにくっつけるんですかラ、はやく換えた方がいいデショ?!」
マオマオ
「シュエにくっつけたら、シュエになるからな……」
マオマオ
そっと頬に手を添えたりするが、この男は普通に街で女を買うこともある。
シュエシュエ
ヒグマの爪もかくやという鉄爪が夫を傷つけたことは、今のところ一度もない。
マオマオ
それはそうだ、そのための妻、そのための死体。
シュエシュエ
頬に手を添えられればすん、と腐汁を啜る。
マオマオ
この男は、軽率に真実であることを神に誓う。
マオマオ
それが真実かどうかは、その時の気分次第。
シュエシュエ
それが真実かどうかは、シュエにはあまり関係ない。
マオマオ
2D6+4 (2D6+4) > 4[3,1]+4 > 8
マオマオ
「やっぱり俺にはお前だけだ。愛してるよ、シュエ」
マオマオ
そんな甘言を囁くのは、死体をどうするかという話なのだけど。
マオマオ
どちらにしても、これだけ状態のいい死体が手に入れば、交換用のパーツは十分補充できるだろう。
シュエシュエ
流石に死体を堂々抱えるわけにもいかない、慣れた様子でボロにくるんで。
シュエシュエ
換えたばかりのときは若くて張りもあったものだが。
マオマオ
換えたばかりのときは、本当にいい足だった。
シュエシュエ
長らく血の通わない肉はしぼみ、もはや見る影はほとんどない。
マオマオ
かつての姿を想い、ふくらはぎに唇を寄せて、膝裏を舐めた。
シュエシュエ
びく、と跳ねる。本物の感覚によるものではない。
シュエシュエ
失った足に痛みを感じることがあるのとおなじ。
シュエシュエ
失ったはずの命が、なおも愛に応えようとしている。それだけ。
マオマオ
放り出した足には目もくれず、立ち上がる。
シュエシュエ
曖昧な記憶の中に、それだけが焼きついている。
GM
傾いていく日を厚い雲の向こうに感じながら、二人は墓地を後にする。
GM
二人の今日の戦果となった、哀れな哀れなジェシカをつれて!
GM
敗者シュエシュエは、『マオマオの寵愛』を獲得。
GM
これはキャラクター作成時の所持品数制限にかかりません。