GM
鐘の音が響く。十二回。
GM
真夜中。
GM
音楽は絶えず、ホールには踊る人々も多い。
GM
幻のような舞踏会は続く。
GM
窓のないホールには、時の流れは曖昧で――
GM
それでも夜は更け、朝は来る。
GM
二日目が訪れる。
GM
あなたがたの、『三十日目』が。
GM
GM
では、シュエシュエの手番です。
シュエシュエ
マオマオさんの疵を舐めます。
GM
シーンづくりにご希望があればどうぞ。なければシーン表を。
シュエシュエ
1D12 (1D12) > 11
GM
11:紳士の絵画の下 大きな金の額縁が鈍く輝いている。ワインを嗜む紳士が描かれている。
GM
既出なので振り直してもいいですよ。
シュエシュエ
振り直します……
シュエシュエ
1D12 (1D12) > 2
GM
2:貴婦人の絵画の下 大きな金の額縁が鈍く輝いている。仰臥する黒いドレスの貴婦人が描かれている。
シュエシュエ
OK OK
シュエシュエ
一夜明け、生身の夫の休息は充分とまではいかなくとも……ひとまずは。
シュエシュエ
腹が減ってはなんとやら。敵情視察がてら朝食を取りに行く、その途中。
シュエシュエ
絵画のかかる廊下を通る。異国の貴婦人たちが描かれた絵画を仰ぐ。
シュエシュエ
夫の後ろを歩いていた足が、止まった。
GM
黒いドレス。白いドレス。赤いドレス、青いドレス。
GM
扇の影に表情の見えない女の絵。
マオマオ
そのまま数歩歩き、足音が一つ減ったことに気付いて振り向く。
シュエシュエ
豪奢な衣裳に身を包む、お姫様のようなおんなたちの絵。
マオマオ
絵画を見上げる。
シュエシュエ
「お城、絵がいっぱいありますネ」
シュエシュエ
いつもなら、空腹の夫の機嫌を損ねるようなことはそうないはずだが。
マオマオ
数秒、ぼうっと絵画を見上げる。横たわる黒いドレスの女。
マオマオ
しかしすぐに妻の方に近づいて、蹴った。
シュエシュエ
「昨日も見たんですヨ。あっちは男の人の絵でしたケド」
シュエシュエ
「あだっ」
シュエシュエ
昨日はなかった蹴り。
マオマオ
「昨日今日とのんびり絵画鑑賞だなんて、随分と優雅な事してるなぁ」
シュエシュエ
「だってェ……裁判のアテはついたカラ……」
シュエシュエ
心の疵に触れられた。触れた。夫のいないところで。
マオマオ
「アテがついたからこそ、弱みの一つでも握ってきたらどうなんだ?」
シュエシュエ
「ンン……でもシュエ、ちょっとあのひとのこと分かったような気がしますヨ」
シュエシュエ
「目が細いほうのひと」
マオマオ
「ほう」
シュエシュエ
左目を吊り上げて見せる。
シュエシュエ
「良いヒトでしタ!」
マオマオ
蹴る。
シュエシュエ
「ああっ」
マオマオ
「具体的に言え」
シュエシュエ
鈍い音。……だが、昨日のような身体がばらばらになる感触はない。
マオマオ
ばらばらにならないように、蹴る場所や殴る場所には気を使っている。
マオマオ
壊れたら、自分が面倒なだけだ。
シュエシュエ
「殴れば勝てそうッテ感じデス!」
シュエシュエ
具体的ではない。
マオマオ
頬を張る。
シュエシュエ
「びゃっ」
マオマオ
「心の疵の話をしろ」
シュエシュエ
「……えっト。故郷がなくなったんですッテ」
マオマオ
「ほぉん」
シュエシュエ
「それが助けられなくテ、でも忘れられなくテ」
シュエシュエ
「そういう、”なくしもの”の疵」
シュエシュエ
包帯の上から眼窩の辺りに袖に覆われた手を置いて。
シュエシュエ
「あとハ……」
シュエシュエ
「昔のコト、訊かれましタ」
マオマオ
フーの心の疵について思案していたが、シュエシュエの言葉に片眉を吊り上げる。
シュエシュエ
「……一番古い記憶は何?ッテ」
マオマオ
「なんて答えた?」
シュエシュエ
「忘れちゃいましタ!ッテ」
マオマオ
「ならいい」
マオマオ
再び歩き始める。
シュエシュエ
「……」
シュエシュエ
「……マオさンの」
シュエシュエ
「一番古い記憶は、なんですカ?」
シュエシュエ
その後ろを、ついて歩きながら。
シュエシュエ
珍しく、あなたについて質問をした。
マオマオ
話を聞いた限りでは、フーにシュエシュエは有利を取っているように聞こえた。それならまぁ、いい。嘘を言うような妻ではない。
マオマオ
妻の質問に、頬を張る。
シュエシュエ
「ッ、」
マオマオ
「お前が俺に質問するなんて、何様のつもりなんだ?」
シュエシュエ
「……ごめんなさイ。……でも、」
マオマオ
別に話したくないという訳ではない。
ただ、妻が質問してくることなど滅多にない。平時と異なる挙動をするのは気にかかる。
シュエシュエ
「シュエ、マオさンの昔の話、聞いたことないなッテ」
シュエシュエ
頬を張られたことを責める態度はまるでない。
シュエシュエ
ただ、どこか”いつも”とはちがう。
シュエシュエ
あなたの腹を探るはずの無い死体が。自我のないはずの道具が。
シュエシュエ
”あなたについて”問いかけようとする。
マオマオ
いつもなら、少し生意気なことを言っても嗜めれば引いていた。質問することも、食い下がることも珍しい。
マオマオ
この妻は、信用できる相手として用意した道具だ。自分の腹を探るはずのない死体。自我のない道具。それがなぜ、自分のことを知りたがるのか。
マオマオ
「……どうした、お前、変だぞ」
シュエシュエ
「?」
シュエシュエ
自覚はないようだった。
マオマオ
聞こえるように舌打ち。
シュエシュエ
昨晩、あなたのまどろみのなかに、腐乱しながら戻って来てから。
シュエシュエ
なにかが外れているような。どこかがずれているような。
ついではいだような。
シュエシュエ
「もしかしてまだ臭いマス……?」
マオマオ
金髪の男に何か言われたのだろうか。そういえば、昨日は包帯が外れ、膿がこぼれていた。
マオマオ
心の疵に触れられたのは、あの男だけではないのかもしれない。
マオマオ
「お前が臭いのはいつものことだ」
シュエシュエ
「あ~~~」
シュエシュエ
自分で嗅いでみても、ぜんぜんわからない。
マオマオ
妻が変わり始めている。
シュエシュエ
あなたの望むようにあるはずの妻が。
シュエシュエ
その答えを待っている。
マオマオ
こんなことは初めてだ。今まで様々な救世主と裁判を行い、腹の探り合いをしてきた。しかし、妻はいつでも自分の望むままでいた。
マオマオ
道具だったはずだった。
マオマオ
返事は返さずに、そのまま歩みを進める。変わりゆく妻にどうしたらいいのか分からない。
シュエシュエ
「マオさンも忘れちゃいましタ?」
シュエシュエ
ついていく。見失わずに。
マオマオ
「お前と一緒にするな」
マオマオ
一緒にするなと言った手前、黙っている訳にもいかない。
マオマオ
「……一番古い記憶か」
マオマオ
先程見上げていた絵画を振り返る。
マオマオ
仰臥する黒いドレスの貴婦人。
マオマオ
「草原で、母が寝転がっている」
マオマオ
「俺は母の黒いスカートの膝に頭を乗せて、空や花を眺めている」
マオマオ
「暖かい日だった」
シュエシュエ
「おかあさん……」
マオマオ
ちょうどあんな感じに、と絵画を顎で示す。
シュエシュエ
死体のあたまのなかの、歯抜けの本のページが翻る。
シュエシュエ
ふたたび絵画を見上げる。
シュエシュエ
「……お母さン、好きでしたカ?」
マオマオ
しばらく絵画を見上げている。
マオマオ
紙煙草を取り出して、火を付けた。
マオマオ
「さぁ……」
マオマオ
煙をシュエシュエに吹きかける。
シュエシュエ
特に実害はないが、いやそうにした。
シュエシュエ
「……」
シュエシュエ
「シュエのいちばん古い、いちばん大事な記憶はネ」
シュエシュエ
「マオさンが、起こしてくれたときのコトですヨ」
シュエシュエ
*マオマオの心の疵『虚言吐き』を猟奇で舐めます。
GM
横槍はございますか?
”フー”
*横槍します
GM
では能力値のチョイスから。
”フー”
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
”フー”
やったぁ
”フー”
猟奇で判定します
”フー”
2d6+4>=7 (2D6+4>=7) > 5[4,1]+4 > 9 > 成功
GM
成功。効果量を
”フー”
1d6 (1D6) > 2
シュエシュエ
*ティーセット使います。
シュエシュエ
2D6+4+2-2=>7 (2D6+4+2-2>=7) > 11[5,6]+4+2-2 > 15 > 成功
シュエシュエ
*マオマオの寵愛 使用します……
GM
では、5が6になって……スペシャル!
GM
PCがお茶会中の判定でスペシャルを起こした場合〔自身の所有する六ペンス/2〕までの価値の小道具を1つ入手します。
GM
シーン終わりに決めてください。
[ ”フー” ] HP : 20 → 19
[ シュエシュエ ] ティーセット : 2 → 1
[ シュエシュエ ] マオマオの寵愛 : 1 → 0
[ マオマオ ] 虚言吐き : 0 → 1
GM
*『虚言吐き』は……心の性感帯です!
GM
マオマオには、『シュエシュエへの恋心』が付与されます。
シュエシュエ
うそをついた。
マオマオ
「ふーん」
シュエシュエ
ほんとうはもうすこし古い記憶も、この腐ったあたまの中に残っている。
マオマオ
死体の記憶がどうなっているかは分からない。死と共に全て抜け落ちているのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
マオマオ
特に今の妻は、どこかおかしい。
マオマオ
しかし、まぁ。
マオマオ
それでもいいか、と思った。
シュエシュエ
でも、いちばん大事な記憶なのは、ほんとう。
マオマオ
「シュエ」
シュエシュエ
「はイ」
マオマオ
「お前は俺を裏切らないな?」
シュエシュエ
無事な左目が、あなたを見つめて瞬く。
シュエシュエ
「はイ」
マオマオ
「いいか、一度しか言わない」
マオマオ
「お前は裏切らないって、信じる」
シュエシュエ
驚いた顔。
シュエシュエ
「どうしちゃったんですカ!」
シュエシュエ
「マオさンも、なんかヘン!」
マオマオ
「そうだな」
マオマオ
「お前のせいで変になった」
シュエシュエ
自我のないはずの死体が。あなたの腹を探らないはずの死体が。
シュエシュエ
あなたの疵に触れて、わらった。
マオマオ
小さく苦笑して、妻の袖に隠れた手を取った。
マオマオ
「大ホールに行ったら、少し踊ってみるか」
シュエシュエ
心が早鐘を打っている。
シュエシュエ
ないはずの心臓が、きゅっとしめつけられる、まぼろしが。
シュエシュエ
「喜んデ」
マオマオ
大ホール。絶えず響く音楽。幻のような舞踏会。
マオマオ
花嫁衣装の屍と、牧師の姿の虚言吐きが手を取り合う。
マオマオ
夫婦のダンスが始まった。
GM
心には疵がある。
言葉には嘘がある。
GM
けれど、それらがあったとて。
GM
疵はいつだって罪ではない。
嘘は必ずしも裏切りではない。
GM
だから、それらがあったとて。
GM
信じている。
GM
信じたいと思っている。
シュエシュエ
*子山羊皮の手袋を取得します。
[ シュエシュエ ] 子山羊皮の手袋 : 0 → 1
GM
GM
では、次。フーの手番。
”フー”
とりあえず場所を決めますか
GM
よろしいでしょう。
”フー”
1d12 (1D12) > 3
GM
3:オイルランプの回廊 大広間にある扉の外、橙の灯が等間隔にともる窓のない回廊。いくつもの扉が並んでいる。
”フー”
廊下だ~
”フー”
シュエちゃんの疵を抉るんですけど、今なにしてる感じですか?
シュエシュエ
夫といちゃついていますが……
”フー”
マリユスを部屋に残し、ふらふらと出歩く。
出歩くと言っても大ホールを中心にあちらこちらの廊下を見てまわる。
”フー”
ふと大ホールを見れば、裁判相手の夫婦が踊っている。
手を取り合って、仲睦まじく。
”フー”
しばらくの間踊っていたが、しかし疲れたのか夫の方がソファへと腰かける。
”フー”
オレンジの明かりが静かに揺れている。
”フー”
あの男のどこがいいのだろうか。
そもそも本当に夫婦なのか?
”フー”
死者を起き上がらせたとき、一番簡単なのは『あなたの伴侶だ』と伝えること。
”フー”
そうするだけで、疑問も持たず従順で健気な人形の出来上がり。
”フー”
休んでいる夫が2、3言あの女……シュエに声をかける。
”フー”
シュエの方は傍に居たかったようだが、すぐにあちらこちらと邸内を熱き回ることにしたようだ。
シュエシュエ
舞踏会の空気に酔っているのか、相変わらずの夢見るような足取りで。
シュエシュエ
踊り交わす幻の間をすり抜けて。
シュエシュエ
ランプの並ぶ回廊に出る。高い天井を見上げて。
”フー”
「や、どうもどうも」
”フー”
昨日と変わらない様子で、金髪の男が姿を現す。
シュエシュエ
「あラ」
”フー”
「いやぁ……見てましたけどお上手でしたよ、踊り」
シュエシュエ
包帯、化粧、香水。”きれいな”死体が振り返る。
シュエシュエ
「えへへ……」
”フー”
「おや、見ちがえるようだ!」
”フー”
「昨日は申し訳ないことをしましたからねぇ」
シュエシュエ
「きのう」
シュエシュエ
僅かに、間。
シュエシュエ
「大丈夫でスヨ」
シュエシュエ
「怒られませんでしタ!」
シュエシュエ
くるりと回る。ずいぶん”調子”がいい。
”フー”
「おお、それはよかった。体の動きも良かったようですし……旦那さんのご機嫌もよかったようで」
シュエシュエ
いつもならむせ返るような樟脳の香りも、それに紛れている腐臭も、いまはほとんど気にならない。
シュエシュエ
「はイ!楽しく過ごさせてもらってマス」
”フー”
「いやぁ、ちょっと心配だったんですよぉ。旦那さんの許可を得ずに随分と話し込んでしまったでしょう?」
”フー”
私としたことが、と言わんばかりに頭に手をそれ軽く首を振る。
シュエシュエ
ニコニコと、右の口端を僅かに引きつらせて笑う。
シュエシュエ
「ご心配おかけしましタ」
シュエシュエ
大仰に、頭を下げる。札が揺れる。
”フー”
これはこれは、とお辞儀を返す。
”フー”
「……ところで、旦那さんには俺のことを?」
”フー”
わざとらしくひそひそと囁くように。
”フー”
「……本当に怒ってませんでしたぁ?」
シュエシュエ
「ほんとほんト」
シュエシュエ
「やましいコトはな~んにもないので、お話しちゃいましタ」
”フー”
「ははは!確かにそうですねぇ!」
”フー”
「旦那さんはどういう人なんです?直接聞いても、俺にはわからないだろうって言われちゃいましたからね」
”フー”
「ああ、これはどちらかというと”興味”の方です」
シュエシュエ
「ナイショ」
”フー”
「おっと手厳しい」
シュエシュエ
「シュエの大事な旦那様ですモノ」
シュエシュエ
「とっちゃ嫌」
”フー”
「ははは、とりませんとも!約束しましょう!」
”フー”
「ところでそれほどに仲の良いご夫婦でしたら……」
”フー”
「結婚式の時のことは覚えてらっしゃらないんで?」
”フー”
「初めて出会った時のことや」
”フー”
「例えば、初めて抱き寄せられた日のことだとか」
”フー”
「もしくは、唇を重ねた日のこととか」
”フー”
「夜を共にしたとか」
シュエシュエ
「?!」
”フー”
表情は変わらず、雰囲気も声色もむしろ昨日より落ち着いている。
”フー”
まるで世間話というように。
シュエシュエ
「えっ、えっ、えっ」
シュエシュエ
頬を赤らめる血は、死体には流れていない。
シュエシュエ
「……夫婦の個人的なおはなしでスヨ」
シュエシュエ
「よくないデス、そういうこと訊くノ」
”フー”
「んふふ」
シュエシュエ
顔を覆って首を振る。
”フー”
「いやぁ、一日考えたんですけどねぇ。やっぱりどうしても気になるというか……」
”フー”
「昨日の俺のいじわるな質問に、どうして嘘をつかなかったんですかね?」
”フー”
「『旦那さんと出会った日』とか、『結婚の祝いをした日』とか……」
”フー”
「そういうのでもよかったんでは?」
シュエシュエ
「……」
シュエシュエ
頭のなかになんとか残る腐った脳が、昨日のことを思い出そうとうごめく。
シュエシュエ
「それハ」
シュエシュエ
「シュエが、訊かれたのは、一番古い記憶のことデ」
シュエシュエ
問われた記憶をひとつひとつ思い出すことができるかといえば、それは。
シュエシュエ
ばらばらの身体。ばらばらのパーツ。ばらばらの。
シュエシュエ
「別二、嘘なんかつかなくったッテ、シュエの記憶がちょっとダメになってるのハ、本当のことだシ」
シュエシュエ
歯切れは悪い。
シュエシュエ
明らかに、”訊かれたくない”ことだ。
”フー”
「ええ、辛く大変なことだ」
”フー”
声のトーンを落とし、何かが笑っていないようなちぐはぐな表情。
”フー”
「何かあっても、忘れてしまう。出会った時のことも、式のことも、これまでの生活のことも忘れてしまう……じゃあ―――」
”フー”
「……旦那さんから、そういう話をしてもらったことはありますかねぇ?」
”フー”
「シュエさんは別に、起きた時に旦那さんの顔を忘れているわけでもなければ……何故ここにいるかだとか、そういうことは覚えてますよねぇ」
”フー”
「だから、すべて忘れてしまうってことはないと思うんですよね」
シュエシュエ
唇がゆるく開く。思い出そうとする間ではなく、肯定の気配を含んだ間。
シュエシュエ
けれどそれを肯定してしまっては。頷いてしまっては。
シュエシュエ
死体になってから、目を覚ますまでの間にある空白を。
シュエシュエ
この死体が埋めるすべを持ってはいないことを、”思い出して”しまう。
シュエシュエ
「シュエは、昔のこト、あんまり訊かないようにしてるかラ」
シュエシュエ
「それデ、話してもらってないだけデ」
シュエシュエ
「……大体、あなたにそんな話する必要、ないですモノ」
”フー”
「ははは、それはごもっとも!」
”フー”
「でも俺は思うんですよねぇ」
”フー”
「………それって、存在しない”嘘”だからじゃあ?」
”フー”
*つぎはぎハートを猟奇で抉ります
GM
横槍はございますか?
マオマオ
まぁ~愛しているので横槍しますか~
マオマオ
* 横槍します
GM
では能力値チョイスから!
マオマオ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
マオマオ
* 愛している妻の横槍に手抜きする訳にはいかないので、ティーセット使います
マオマオ
1D6+2 (1D6+2) > 2[2]+2 > 4
マオマオ
2d6+2 (2D6+2) > 3[1,2]+2 > 5
GM
失敗ですね。
マオマオ
ごめん妻……
マオマオ
ファンブル一歩前だった……
[ マオマオ ] ティーセット : 1 → 0
[ マオマオ ] HP : 23 → 22
シュエシュエ
いいですヨ♥
GM
ではフーの判定。
シュエシュエ
よくないが……
”フー”
判定しまーす
”フー”
2d6+4>=7 (2D6+4>=7) > 10[5,5]+4 > 14 > 成功
GM
成功!
”フー”
よかった~
GM
*『つぎはぎハート』は心の性感帯です。
GM
シュエシュエには『フーへの恋心』が付与されます。
[ シュエシュエ ] つぎはぎハート : 0 → -1
シュエシュエ
ばり、と。音が。それは幻聴かもしれないけれど。
シュエシュエ
雷の落ちるような音が。
シュエシュエ
死体の耳に響く。
シュエシュエ
『不細工!』『あんたなんか生むんじゃなかった』
シュエシュエ
『このブス』『ああなんて醜い子!』
シュエシュエ
鏡に映る自分の顔を覚えていない。
シュエシュエ
『あんたみたいなブスを嫁にもらってくれるって』
シュエシュエ
『喜びなさい、相手は死体!あんたがブスでも大丈夫!』
シュエシュエ
「あ」
シュエシュエ
よろめく、一歩。二歩。
シュエシュエ
後ろに下がり、膝から力が抜ける。
シュエシュエ
へた、と座りこむ。ぶよぶよとした肉が床に叩きつけられるひどい音。
シュエシュエ
こんな顔でも、がんばっていれば、いつか王子様がくると、そう信じていて。
シュエシュエ
『安心しなさい、顔ならちゃんときれいにしてあげるから』
シュエシュエ
夫となるそのひとは、とても美しい死体で。
シュエシュエ
『さみしがっているの。あなたが慰めてあげて』
シュエシュエ
だから、それで、もういいかと、思って。
シュエシュエ
こんな不細工な女でも、さみしがりのこのひとを慰められるのなら。
シュエシュエ
それでいいと、思ったから。毒を呷ったの。
シュエシュエ
「あ…………………………………………………!」
シュエシュエ
顔が崩れる。ぐずぐずに崩れていく。
シュエシュエ
あなたがそれを見るのは二度目。
”フー”
男は顔を背けない。
シュエシュエ
あの美しい死体は、いま夫を名乗るそのひとではなかった。
シュエシュエ
それを、”思いだす”。
シュエシュエ
「……!……!!!!」
シュエシュエ
声にならない悲鳴が上がる。
シュエシュエ
顔がぐずぐずに溶けては戻ろうとして、また崩れ。
シュエシュエ
ついではいで作られた美しさを失っていく。
シュエシュエ
「見ないデ……!」
シュエシュエ
それだけ絞り出すように。
”フー”
「………」
”フー”
長い脚を折りたたみ、座り込んだシュエシュエと目線を合わせる。
顔をそらさずただシュエシュエを見ている。
シュエシュエ
「ちがう、ちがう、ちがう……」
シュエシュエ
ぜんぶうそ。ぜんぶ。
シュエシュエ
空白に穴が開く。見ないふりをしていた現実が覗く。
シュエシュエ
眼窩から粘ついた膿が吹きだす。
シュエシュエ
涙みたいに。
シュエシュエ
幻想が崩れていく。
”フー”
手を伸ばす。
細くしなやかな手足からするとやや大きな手。
”フー”
涙のように膿を吹き出す頬へと。
”フー”
触れる。
シュエシュエ
触らないでと跳ねのけることも出来なかった。
”フー”
崩さぬよう、こそがぬよう。
その冷たい肌を掌に感じながら、そっと膿を親指でぬぐう。
シュエシュエ
肌がねばつく。その指を汚す。
シュエシュエ
抜け落ちた本のページが、自分が読まぬように封じていただけだったことに気付く。
シュエシュエ
気づかされる。
シュエシュエ
「あ、ぅ、うぅ……」
シュエシュエ
嗚咽めいて唸っても、死体は涙を流さない。
”フー”
汚れもかまわず添えた手は冷えた肉を温める。
”フー”
「俺はですねぇ」
”フー”
ゆっくりと口を開いた。
”フー”
「手に収まらないものばかり気にしてきたんで」
”フー”
「あんた1人が、俺の掴めるせいぜいですよ」
”フー”
そういうと男はもう一方の手を差し出す。
”フー”
手を取って。
そういうように。
”フー”
俺を選べというように。
シュエシュエ
王子様が。いつか王子様が。
シュエシュエ
そう願い続けて、そうして。
シュエシュエ
あきらめた、その瞬間の記憶が。
シュエシュエ
袖のうちに隠された、僅かばかり腐肉のついた骨を震わせる。
シュエシュエ
「わたし、」
シュエシュエ
「こんな、かおで、」
シュエシュエ
その手を取らない理由を探す。
シュエシュエ
「わたし、死んでて」
シュエシュエ
あなたを選ばない理由を探す。
シュエシュエ
「あのひとの、妻で」
シュエシュエ
ここに自分を蹴飛ばす足が無い。
シュエシュエ
ここに自分の頬を張る手が無い。
シュエシュエ
腐った肌に触れる大きな手だけ。
”フー”
「自分で選んで、いいんですよ」
シュエシュエ
もう言葉にはならなかった。
シュエシュエ
後ろへ退がる。名残惜しげに腐肉が糸を引いて。
シュエシュエ
立ち上がり、背を向ける。ふらつく足で走りだす。
シュエシュエ
腐った肉の匂いだけがそこに残る。
”フー”
男は追わずただその背を見ていた。
GM
愛しあう夢が崩れ去り、信じあう幻が腐り落ちる。
GM
けれどもここは、ゆめまぼろしの舞踏会。
GM
偽りの夢が朽ちたなら、古い幻が褪めたなら。
GM
ここには、ゆめまぼろしがいくらでも満ちている。溢れている。輝いている。
GM
手に取って選べる。
GM
今度こそ本物かもしれないものを。
マリユス
客室、フーの姿はすでにない。
マリユス
気を使ったのかもしれない。
マリユス
今日が終わるまでには、全てが終わる。
マリユス
2人は死んで、自分達だけが残る。
マリユス
喉を抑えて、しばらく息を止め。
マリユス
胸元の札を、外す。
マリユス
「はぁ……」
マリユス
零れたため息は、これまでの低いものとは違う。
マリユス
「問題ない。大丈夫……」
マリユス
澄んだ泉のような声。
昔の声。泣き叫んで枯れた声ではなく。
聖歌を歌ったあの日の声。
これも、忌々しい疵の力。
マリユス
冠を手に取ると、その宝石が赤に染まる。
マリユス
勝たなければならない、絶対に。
マリユス
私は苦しんで死ぬために生まれたんじゃない。
マリユス
「……ドレスを」
マリユス
舞踏会だ。
マリユス
使えるものは何でも使う。
マリユス
これまでも、これからも。
マオマオ
大ホール。壁際の椅子に座って休んでいる。
マオマオ
シュエシュエは道具だ。
決して自分を裏切らない、自分のための便利な道具。
マオマオ
そのはずだった。
マオマオ
道具が自分に逆らった。そのはずなのに、悪い気はしない。
マオマオ
自分の言うことに逆らってまで妻が求めたのは、自分の話だった。
マオマオ
妻のいちばん古い、いちばん大事な記憶は。
マオマオ
自分が起こした時のこと。
マオマオ
自分と出会った時のこと。
マオマオ
他人のために用意された花嫁の墓を暴いて、道士に嘘を吐いて、夫だと思わせた。
マオマオ
それ以前の人生もあっただろう。あの歳まで生きたのだから、それなりに楽しいことも、悲しいこともあっただろう。
マオマオ
しかし、それらは存在しないと言う。
マオマオ
妻は、シュエシュエは道具ではない。
マオマオ
そして、多分。
マオマオ
世界で一人だけの、信じられるひと。
マオマオ
大ホールの豪奢な天井を見上げる。
マオマオ
シュエシュエを妻に選んでよかった。
マリユス
ホールの扉が開く。
マリユス
赤いハイヒールの踵がかつりと乾いた音を響かせる。
マリユス
どこもかしこも仮面をつけた奇妙な人々ばかり。
マリユス
魔族信仰、夜色の袖が翻る。
マオマオ
大ホールに一人の女が現れた。仮面を付けていない。救世主だろう。
マオマオ
……救世主?
マオマオ
いまここにいる救世主は、4人だけではなかったのか?
マオマオ
いや、あの顔を覆うヴェールや立ち姿には見覚えがある。
マオマオ
「……!?」
マリユス
視線が、救世主の姿をとらえた。
マリユス
微笑む。
マオマオ
昨日の男だ。
そして、女だ。
マリユス
ヒールの分だけ、少しだけ背が高く見える。
マリユス
その音が、姿が近づいてゆく。
マオマオ
昨日話した声を思い出す。低く響く男の声。昨日見たワイングラスをつまむ指先を思い出す。わからない。そこまで見ていなかった。
マリユス
「……昨日ぶりですね。」
マリユス
澄んだ泉のような女声。
マオマオ
「え、ええ……」
マオマオ
いやぁ、と言いながら立ち上がり、帽子を胸に当てる。
マオマオ
「さすがに言わせて頂きたい」
マオマオ
「お前、女だったのか……!?」
マリユス
「ふふ……随分と、驚かれているようですね」
マオマオ
「それはそうですよ……声まで変わってるんですから」
マリユス
胸元に手を当てる。
マリユス
「封印を……といっても、通じないかもしれませんね。男性でいた方が、何かと都合が良いものですから」
マオマオ
「それは理解できます。女性で不便なことは多い」
マオマオ
「しかし……、私に知られていいのですか?」
マリユス
「ええ」
マリユス
「勝てば生殺与奪はこちらにつきますし」
マリユス
「負ければ……」
マリユス
「……いえ、負けた時の事は考えたくありませんね。」
マオマオ
「まぁ、確かに」
マオマオ
「戦う前から殺される時の心配をしても仕方ない」
マリユス
「ええ……」
マリユス
手を口元に持ってきて、紅く染まった爪を噛む。
マオマオ
「しかし、ご存知ですか?妻の体は傷みやすい。定期的に女の体と交換する必要がある」
マオマオ
「そして一人は死ぬ必要がありますが……、逆に言えば、二人殺さなくてもいい」
マリユス
「おや」
マリユス
「やめておいた方がいいですよ」
マオマオ
「あなたが女だと知ったことで、あなたを殺す優先度が高まった、かもしれない」
マオマオ
「それはどうして?」
マリユス
「私の身体は酷いものですから」
マオマオ
「ほう」
マオマオ
先程噛んでいた、紅い爪を見る。
マリユス
微笑み、顔を近づけてささやく。
マリユス
「ご覧になりますか?」
マオマオ
「……ええ、見せて頂けるのなら」
マリユス
「…………」
マリユス
手を差し出す。
マオマオ
差し出された手を取る。
マリユス
目の前に膝をつき、右手でとった手を左袖の中へと導く
マリユス
触れた腕には、鞭打たれた痕がはっきりと残っている。
マオマオ
指が肌の上を這う。指先は傷跡を辿る。
マオマオ
「なるほど」
マリユス
「…………」
マリユス
「他はもっと酷いと思いますよ」
マリユス
「ご覧になりますか?」
マリユス
「お気に召さないと思いますが」
マオマオ
「おやおや」
マオマオ
「随分と親切ですねぇ」
マオマオ
手を離して、服の上から腕を撫でる。
マオマオ
「こういうのも嫌いじゃないですよ」
マリユス
マリユスは目の前に膝をついている。
マリユス
その上体が少し前に倒される。
マオマオ
僅かに目を見開く。
マリユス
「『おわかり』いただいた方が……よろしいかと思いまして。」
マリユス
マオマオの膝に触れる。
マオマオ
「……なるほど」
マオマオ
「そういえば、あなた方の方が頼りになる、という話をしていましたね」
マリユス
「ええ」
マリユス
「こうも言いました。『死ぬのは二人でなくともよい』、と。」
マリユス
「もうひとつ、言うならば……」
マリユス
「『身体』も、ひとつでなくてもいいのでは?」
マオマオ
マリユスの顔を見る。ようやく、初めてと言っていいくらいに。
マオマオ
「わからないな」
マオマオ
「条件だけなら、なるほど魅力的だ。しかし私には、まだあなたを信頼できるだけの材料がない」
マオマオ
「今日初めて会ったあなたよりも、私以外の記憶を持たない妻の方が信頼できる」
マリユス
「本当に?」
マリユス
「……いえ、失礼いたしました。どうも」
マリユス
「私の相方が、奥方にご執心のようでしたから」
マオマオ
「……それは初耳だ」
マリユス
「本当に、貴方以外の記憶を持たないといえますかどうか」
マオマオ
「さて、どうでしょうね」
マオマオ
「もし嘘を吐いているのなら──」
マオマオ
「私が死ぬまで騙し通して欲しいところです」
マリユス
「ふふ」
マリユス
「お優しいことをおっしゃいますね。少々意外です」
マオマオ
「これはこれは、人の心を手玉に取るようなあなたがそんなことを言うなんて」
マオマオ
「どんな男だと思いましたか?」
マリユス
「暴力的で実利主義、嘘吐きで人を信じない」
マオマオ
「ははは」
マリユス
「ですから、実のところ」
マリユス
「信用いただけるとは思っておりませんよ」
マリユス
「生かしておいた方が有益だと思っていただければ、まあ……」
マリユス
「儲けものだなと」
マオマオ
膝をついたマリユスの顎を、指先で軽く持ち上げる。
マオマオ
「お前が言う通り、俺は暴力的で実利主義、嘘吐きで人を信じない」
マオマオ
顔を寄せる。
マオマオ
「でも、人を信じたいと思っている」
マオマオ
「有益かどうかは二の次、三の次だ」
マリユス
「…………」
マオマオ
「俺が最も重視するのは、信じられるかどうか」
マオマオ
ぱっ、と手を離す。
マオマオ
「ですが、信頼は相互に築くものです。あなたは私を信頼できないでしょうし、逆もまた然りというものじゃないですか」
マリユス
「ええ」
マリユス
「私は貴方を信用できない」
マリユス
「その服」
マオマオ
これ?というように手で示す。
マリユス
「見たところ、術者か聖職者のように見えますが」
マオマオ
「分かりますか。聖職者ですよ。熱心でないことは、ご想像頂けると思いますが」
マリユス
「ふふ」
マリユス
「私が何よりも嫌いな職業です」
マオマオ
「おや」
マオマオ
「異教徒だから、ではなく?」
マリユス
「ええ」
マリユス
「ええ……」
マオマオ
「あなたも神職の方に見えますが」
マリユス
「そうですね」
マオマオ
「面白い人だ」
マオマオ
「では、あなたが秘密を教えてくれたお礼に、私も一つ教えましょう」
マオマオ
「私はね、母が聖職者だったんです」
マオマオ
「牧師をやっている理由は、それだけ」
マオマオ
「戒律を守っている訳でも、神を信じている訳でもない」
マオマオ
「……信頼は相互理解によって成り立つものです。ご参考にして頂ければ」
マリユス
「…………」
マリユス
立ち上がる。
マリユス
目を閉じ、胸に手を当ててひと呼吸。
マリユス
「そうですか」
マリユス
微笑んだ。
マリユス
立ち上がると赤いフリルからぽたぽたと血が滴る。
マオマオ
滴る血を見る。
マリユス
「いいんです。初めから……期待していたわけではありませんし……」
マリユス
「私はただ……死にたくないだけですから」
マオマオ
死にたくないと言う女を見る。
マリユス
少しだけ、寂しそうな笑みを残し。
マリユス
女は背を向けた。
マオマオ
背に声をかける。
マオマオ
「私が勝者になったなら」
マオマオ
「死体は妻に手を出した男にしましょう」
マリユス
その声にこたえる言葉はなく。
マリユス
ただ、ヒールで踏んだ場所に血痕を残して人ごみに消えていった。