GM
では、マオマオの手番を始めていきます。
マオマオ
おねがいしまーす
マオマオ
まずちょっとシュエちゃんと話したいですね
GM
OK では、場所を指定するかシーン表を。
マオマオ
Choice[貴婦人,紳士] (choice[貴婦人,紳士]) > 貴婦人
マオマオ
2:貴婦人の絵画の下 大きな金の額縁が鈍く輝いている。仰臥する黒いドレスの貴婦人が描かれている。
マオマオ
マリユスと話してしばらく後。
マオマオ
妻はなかなか戻って来ない。
マオマオ
金髪の男がちょっかいを出していた、とも聞いている。しびれを切らして探しにゆく。
マオマオ
大ホールをぐるりと回って、廊下へ。
マオマオ
足の向くままに探す。
マオマオ
気が付くと、先程妻と見た貴婦人の絵画の下にいた。
シュエシュエ
そこへ、腐臭。
シュエシュエ
疲れを忘れた身体は、一度駆け出してしまえば止まることも出来ずに彷徨っていた。
マオマオ
振り返る。
マオマオ
「シュエ」
シュエシュエ
「 」
シュエシュエ
その姿を見留めて立ち止まる。
マオマオ
「どうした、お前また包帯が取れているじゃないか」
マオマオ
顔に触れようとする。
シュエシュエ
「あ……」
シュエシュエ
見せたことのない顔。
マオマオ
「……シュエ?」
シュエシュエ
――振り払った。
シュエシュエ
「……っ、」
マオマオ
驚いた顔で、見る。
マオマオ
「どうした、シュエ……?」
シュエシュエ
「……ちがう」
シュエシュエ
「わたし、あなたの、妻じゃない……」
マオマオ
「……は?」
マオマオ
妻を見る。
シュエシュエ
ゆら、と。
マオマオ
シュエシュエの様子は、先程からおかしかった。妻は変わり始めていた。
シュエシュエ
俯き、首を振り。幽霊のよう。
シュエシュエ
「わたしの夫は……あなたじゃ、ない……」
マオマオ
望むようにあるはずの妻が、便利な道具であるはずの妻が。
マオマオ
絶対に裏切らない、自分だけの味方であるはずの。
マオマオ
妻が。
シュエシュエ
その存在意義を、否定した。
シュエシュエ
「……おもいだした、ぜんぶ、思い出しました」
シュエシュエ
ぐずついた肉が、ぼたりと垂れてぴかぴかに磨かれた床を汚す。
シュエシュエ
「わたし、あなたのお嫁さんになったんじゃない」
マオマオ
光の灯らない虚ろな目を見る。
シュエシュエ
もはやその顔もどこかあなたの知るそれとは違う。
シュエシュエ
あなたの、知らない女の顔だ。
マオマオ
気立てがよくて、明るくて、夫をよく立てる従順な妻。
マオマオ
そのはずだった女。
シュエシュエ
「…………」
マオマオ
全てを思い出したのなら、そのまま悟るだろう。今まで何度も繰り返したように、彼女自身も墓の下から盗まれたものだと。
マオマオ
そのことに、罪悪感を抱く男ではない。
シュエシュエ
ほんとうならいまごろ。全部の辛いことを忘れて。
シュエシュエ
言葉を交わしたこともない美しい王子様と一緒に眠っているはずだった。
シュエシュエ
こんなに醜くなるまで連れ回されることも、殴られることも蹴られることも。
シュエシュエ
もうないはずだったのに。
マオマオ
「確かに、お前は別の男に用意された妻だ」
マオマオ
「だが、それがなんだ?」
マオマオ
「お前だって、楽しそうにしていたじゃないか。嬉しそうにしていたじゃないか!」
マオマオ
「死後にまた別の人生を歩むことができたんだから、感謝してもいいくらいじゃないのか?」
シュエシュエ
「でもぜんぶにせものだった」
マオマオ
「だからなんだ」
シュエシュエ
「こんなにぐちゃぐちゃになるまで連れ回されて!」
シュエシュエ
「殴られて、蹴られて、ひどいこといっぱいされて、して!」
シュエシュエ
「それを、感謝してもいいって、そんなの」
シュエシュエ
「そんなの……」
マオマオ
「そんなの、なんだ」
シュエシュエ
「ひどい」
シュエシュエ
「……最低……!」
マオマオ
「…………」
マオマオ
「お前は」
マオマオ
「俺を裏切らないと言った」
マオマオ
「あの言葉はどうなった?」
シュエシュエ
「先に裏切ってたのは、あなたじゃない!」
シュエシュエ
「ほんとのこと言おうと思えばいくらでも言えたのに!」
シュエシュエ
「……あなたが、むりやり、そうしてたんじゃない……!」
マオマオ
「…………」
マオマオ
「お前は」
マオマオ
言葉を選ぶように、迷うように、僅かな逡巡。
マオマオ
「俺が嘘を吐いていたから……俺を裏切るのか?」
シュエシュエ
「……」
シュエシュエ
「あなたが好きだって言った顔だって嘘」
シュエシュエ
「わたし、もともとこんな顔だったんじゃない」
シュエシュエ
無事だったはずの左半分もぐずつき、腐り、なんらかの形を取ろうとしては崩れていく。
シュエシュエ
「どうして嘘つきが信じてもらえるって思ったの?」
シュエシュエ
「あなたがわたしにほんとのこと言ったことなんて一度でもあった?」
シュエシュエ
「こんなひとだって知ってたら、わかってたら、裏切らないなんて言えなかった」
マオマオ
呆然と、女の姿を見る。
便利な道具だったはずの、信頼できる味方だったはずの、妻だったはずの、知らない女。
マオマオ
妻はいつでも自分の望むままでいた。
マオマオ
それなのに、自分の言葉の全てを疑い、全てを否定している。
マオマオ
嘘つきは、信じられないと言っている。
シュエシュエ
この女は。あなたを夢見るようには見ない。
シュエシュエ
あなたの虚言を呑まない。
シュエシュエ
呑まなく”なって”しまった。
マオマオ
「……俺は」
マオマオ
「嘘つき、だから」
マオマオ
ぎこちない言葉が続く。
マオマオ
「だから」
マオマオ
「信じてくれるひとを、探して」
マオマオ
浅い呼吸。
マオマオ
「お前は」
マオマオ
「裏切らないって言うから」
マオマオ
「信じる……って」
マオマオ
「言ったのに」
マオマオ
雫が、床に落ちる。
シュエシュエ
「なんでそんな顔するの?」
シュエシュエ
「なんで、自分が被害者みたいに」
シュエシュエ
「泣きたいのはこっちなのに!もう涙も出ないのに!」
マオマオ
「シュエ」
マオマオ
呆然としたまま、両手を広げる。
マオマオ
助けを乞うように。
シュエシュエ
それを、光も温もりもない、腐りかけた死体の目が見つめる。
シュエシュエ
「呼ばないで」
シュエシュエ
「わたしのこと、愛してなんかないくせに」
シュエシュエ
「わたしの王子様じゃないくせに!」
マオマオ
妻が遠くへ行ってしまう。
扉を開けて、どこか遠くへ。
マオマオ
「俺がお前の顔を好きだって言ったのは」
マオマオ
「お前の顔だから……」
マオマオ
唇を引き結び、女の足を払う。
バランスを崩すように。
シュエシュエ
「!」
マオマオ
本来シュエシュエに力では敵わない。しかし、体のどの部分が弱いかは知っている。
シュエシュエ
膝から下がぐしゃ、と嫌な音を立てる。
シュエシュエ
目論見通りバランスを崩し、受け身も取れずに倒れ伏す。
シュエシュエ
「なに、すんのよ!」
シュエシュエ
すぐには起き上がれない。悪態をついて。
シュエシュエ
「私のことなんて、なんにも知らないじゃない!」
マオマオ
言葉に答えない。
マオマオ
膝から下が崩れた女を置いて、大股で立ち去る。
シュエシュエ
「何処行くのよ、話まだ、終わってない……!」
シュエシュエ
両手で這うようにしても、その足取りに追いつくにはいたらなかった。
”フー”
長い廊下をすらりとのびた脚でずかずかと進む。
”フー”
身にまとう腐臭は明らか。汚れた左手は死者とのふれあいのもの。
”フー”
部屋に戻る前にメイドを呼び止め、手を拭くものを2枚3枚。
”フー”
臭いは残るが汚れをぬぐい部屋へと向かう。
”フー”
扉を開け中へ。
”フー”
部屋の様子を確認することもなく片手でシャツのボタンを外しながら浴室へと向かう。
”フー”
表情はいつも通り。
”フー”
しかし深く長いため息が出た。
マリユス
適度に整えられたベッドの上には、裏にびっしりと文様が描かれた赤い呪布と、封じるための呪符が2枚。
マリユス
そして畳まれた審問官の装束。
”フー”
視界の端にとらえた見慣れないものに足を止める。
”フー”
”フー”の知る限りあの赤い布と符は視たことがない。
当然自分の持ち物でもない。
”フー”
マリユスのもの。
もしくは、『旦那さん』の何かの仕込みか。
”フー”
後者を一度否定する。あの男にそんなことができるようには思えない。
”フー”
「んー………」
”フー”
マリユスのものだとすると、裁判に向けた準備……にしては見覚えがない。
もちろんこの前の仕事の時には隠していただけの可能性はある。
”フー”
もしくは単なる衣服か。
”フー”
「さてさて、困った」
”フー”
そう言いながらも身に着けていた衣服を次々と脱いでいく。
”フー”
清潔に整えられた室内に”フー”の持ち込んだ腐臭が広がる。
マリユス
ノックの音
”フー”
「はぁい」
”フー”
いつもの明るいトーン。
マリユス
「おや、お戻りでしたか」
マリユス
澄んだ泉のような女声。
”フー”
「……んっふふふ」
”フー”
「初めまして、の声だと思うねぇ」
マリユス
「開けても?」
”フー”
「どうぞ?」
マリユス
扉を開く。
ヒール分、ほんの少しだけ高い視線。
”フー”
視界の先の男はほとんど服を着ていない。
マリユス
目の前の女は動じない。
マリユス
「…………そういう時は」
マリユス
「少し待つようにいうものでは?」
”フー”
「今更気にするかい?」
マリユス
「いいえ」
”フー”
そういいながら脱いだ衣服を手早く洗濯物をまとめる袋へと詰めていく。
”フー”
「匂いがしみついちゃってねぇ」
マリユス
部屋に入って扉を閉める。
扉の前でする話ではない。
”フー”
「しかし……へぇ~~。いい衣装を持ってるんだねぇ。こないだは着てなかったのに」
マリユス
「用意しました。それも……これも。」
”フー”
「んー、なるほど。良く似合ってる」
マリユス
「ふふ……光栄ですね」
マリユス
「しかし……」
マリユス
鼻につく腐臭。
マリユス
「この様子では……」
マリユス
「首尾よくいったようですね」
”フー”
「そう!その通り!」
”フー”
手早く袋の口を結ぶと、元気よくマリユスに指先を向ける。
”フー”
「マリユスが言ってたあの掴みどころのわからない旦那より、妻の方をあたって正解だったねぇ」
”フー”
もちろんやり取りや状況、相手の疵も、深く共有しているわけではない。
”フー”
自分の疵のことも。
”フー”
「どれほどうまくいくかは別として―――もしかしたら裏切ってくれるかもねぇ」
マリユス
「それは吉報ですね……こちらも」
マリユス
「誘いはかけてみたのですが」
マリユス
頬に右拳をあてて首を横に振る。
マリユス
「生憎、乗ってはいただけませんでしたね」
”フー”
「残念だったねぇ。相性悪かった?」
”フー”
責めることもなく、かといって心配するでもない。
マリユス
「初対面の私よりも、奥方の方が信頼できる……とのことで」
マリユス
「まあ、色々しなくて済んだのは残念とも言い切れませんし……」
”フー”
「んふふ」
”フー”
「嘘の関係であの女を縛っておいて変なことを言うねぇ。歪んでるなぁあの男」
”フー”
やれやれと肩をすくめてみせる。
マリユス
「嘘の?……ああ」
マリユス
「そういえば、自分以外の記憶を持たない……とか。仰っていましたね。」
”フー”
「ふふ、あの動く死体は別にあの男の妻でもなんでもないんだ」
マリユス
「ほう……」
”フー”
「まぁ俺はとりあえず匂いを落とすから……どうする?」
マリユス
「そうですね……では」
マリユス
まだ、裁判までには時間がある。
マリユス
「もう少し……歩いてまいりましょうか。貴方の水浴びに興味があるわけでもありませんし、他人のシャワーの音は落ち着きませんし。」
”フー”
「なるほど。お気をつけて」
マリユス
「そちらはごゆっくり」
”フー”
軽い口調でそういうとひらひらと手を振りながら浴室へと向かった。
マリユス
ドレスの裾をつまんで足を曲げる。
マリユス
浴室の扉が閉まれば部屋を出る。

マオマオ
3:オイルランプの回廊 大広間にある扉の外、橙の灯が等間隔にともる窓のない回廊。いくつもの扉が並んでいる。
マオマオ
男が、ふらふらと歩いている。
マオマオ
たくさんの灯りと、たくさんの扉が並ぶ。
マオマオ
この扉全てがどこかに繋がっているとしても、自分はどこも開けない。
マオマオ
帰るべき場所をなくしてしまった。
マリユス
かつかつと、ヒールの音。
マリユス
左手に抱えた皿の上のフィンガーフードを時折摘まみながら回廊を歩く。
マリユス
ここにマナーを咎める者はいないと踏んでの事だったが……
マオマオ
靴音に、振り返る。
マリユス
目が合う。
マオマオ
「あ……」
マリユス
「え……」
マリユス
「っと……」
マオマオ
目が合った。
マオマオ
気まずい。
マリユス
「…………」
マリユス
手を止めて、そのまま歩み寄る。
マオマオ
顔を背けて、涙を拭う。
マリユス
「…………」
マオマオ
歩み寄られると、少し俯いた。
マリユス
近づいたはいいものの、かける言葉はみつからない。
マオマオ
「いやぁ……」
マリユス
先ほどのフーの話しぶりから、心当たりが何もない……というわけでもないのだが。
マオマオ
「お見苦しい所を」
マリユス
「いえ、此方こそ」
マオマオ
皿の上のフィンガーフードに視線を落とす。
マリユス
「お見苦しいところを?」
マオマオ
「……確かに、お互い様でしたね」
マリユス
「ふふ……いかがですか?」
マオマオ
「では、見苦しいついでに頂きましょうか」
マオマオ
一つフィンガーフードを手に取り、そのまま床に座り込む。
マオマオ
あぐらをかいた。
マリユス
その姿を見下ろして、微笑む。
マオマオ
壁に背を預ける。
マオマオ
「せっかくですし、話くらい聞いていってくださいよ」
マオマオ
自分の隣を、ぽんぽんと叩く。
マリユス
「…………ええと」
マリユス
「もう少々お見苦しくなりますが、よろしいですか?」
マオマオ
「どうぞ」
マオマオ
もう少々、とはなんだろうか。
マリユス
皿を置いて、両手で金属のスカートの前扉を開く。
マリユス
すると、布のようにふわりと広がって座るのに邪魔なものはなくなる。
そうして、隣へと腰掛け。
マオマオ
スカートの前扉が開かれた。初めて見る光景だ。
マオマオ
「すごい服ですね。拷問具みたいに見えますが」
マリユス
赤いフリルが広がる。
マリユス
「ええ、拷問具です」
マオマオ
「ははぁ……、拷問具を身に着けていらっしゃる……」
マリユス
「お好きですか?」
マオマオ
「そういうのに興奮する趣味はないですねぇ……」
マリユス
「それは残念です。得意なのですよ」
マオマオ
「それは、拷問するほうが?される方が?」
マリユス
袖で口元を隠すように。
少し顔を近づけ「どちらも」と、小さく囁くような声
マオマオ
「へぇ~」
マオマオ
皿の上のフィンガーフードを勝手に手に取る。
マオマオ
「体の傷といい、なかなか大変な境遇だったようだ」
マオマオ
「結構過激な宗教だったんですか?」
マリユス
「…………ええ、そうですね」
マリユス
「私は、両親の顔を知りません。物心ついた時には孤児院にいて……まあ。」
マリユス
「『奉仕活動』を」
マオマオ
「おやまぁ」
マオマオ
「いわゆる、稼げる系の?」
マリユス
首を傾げる
マオマオ
「ではない」
マオマオ
「じゃあ純粋に、そういう教えだったんでしょうか」
マリユス
「ああ、ええと……」
マリユス
「『寄付金』の代わりや……」
マリユス
「…………」
マリユス
「上部への『貢物』のような扱いでしょうか」
マオマオ
「ははぁ~、なるほど」
マリユス
足の位置を変えると裾が音を立てる。
マオマオ
「あなたほど気合が入っているのは見たことありませんが、似たような話は聞いたことがあります」
マオマオ
「親がいない子供は、どうしたって大変ですよね」
マオマオ
あぐらを組んでいた足を、前方に放り出す。
マリユス
「…………」
マオマオ
「私は、母親に捨てられたんですよ」
マリユス
瞬く。
マオマオ
「その後引き取ってくれた人がいたんですが」
マオマオ
「生活が貧しく、また捨てられました」
マオマオ
「多くの人を信じて、多くの人に裏切られました」
マオマオ
「だから……、裏切らない家族が欲しかった。信じられるのなら、死体でもなんでもよかった」
マリユス
「…………」
マオマオ
「でも、だめでしたよ。あなたのパートナーは、よほどの女たらしと見える」
マリユス
「それは……」
マリユス
「残念でしたね」
マリユス
「生憎、家族というものを持ったことがありませんので心情はわかりかねますが……」
マリユス
「私も裏切りは嫌いです」
マオマオ
「おやぁ、気が合いますね」
マリユス
「ええ……」
マリユス
「ですから……」
マリユス
「信用するという事は、私には難しい」
マオマオ
「さっきよりも、納得できる話です」
マオマオ
「……誰かに裏切られたことがおありで?」
マリユス
「…………」
マリユス
「ええ」
マオマオ
「信じていた人ですか」
マリユス
「…………いいえ」
マリユス
「そのころは……私にも、友がいたのです」
マリユス
「彼は魔族……存在自体が異端の者でした」
マオマオ
「へぇ、魔族がいる土地」
マリユス
頷く
マオマオ
自分の故郷にも妖怪の類はいるが、魔族、と言われるとピンと来ない。
マリユス
「彼は外からきて、珍しい話や物をもたらしてくれました。」
マリユス
「私はそれを、孤児院のほかの子にも分け与え……」
マリユス
言葉が詰まる。
マオマオ
「……なかなか、リスキーな話に聞こえますが」
マリユス
「ふふ……ほんの子供でしたからね」
マリユス
「しかし、そう……子供だったが故です」
マリユス
「彼は売られた」
マオマオ
彼女の故郷は、お世辞にもお上品な世界ではなさそうだと思う。であれば、そういうこともあるだろう。
マリユス
「同じ、孤児の……男に」
マオマオ
「…………」
マリユス
「……報酬は何だったと思います?」
マオマオ
「あまり、たいしたものではなさそうな気がしますが」
マリユス
「私ですよ」
マオマオ
「え」
マリユス
「私のせいなんです。彼が死んだのは」
マオマオ
「ああ……」
マオマオ
「……裏切った男と、親しかったんですか?」
マリユス
「いいえ」
マオマオ
「では、あなたの美しさに目がくらんで?それとも身分が目当てで?」
マリユス
「さあ……ただ」
マリユス
「お考えのような行為が行われたのは確かで」
マリユス
「それ以来、こうして」
マリユス
「使い分けているんですよ、性別を。私の信仰する魔王は……」
マリユス
「両性ですのでね」
マオマオ
「……」
マオマオ
人は簡単に裏切る。
時に貧しさによって、時に欲しいものによって。絶対に裏切らない、信頼できる相手を探すのは難しい。
マオマオ
Choice[抉り,舐め] (choice[抉り,舐め]) > 抉り
マオマオ
* 心の疵『異端信仰』を愛で抉ります。
GM
横槍はございますか?
”フー”
*横槍しま~す
GM
では能力値のチョイスから。
”フー”
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
”フー”
2d6+4>=7 (2D6+4>=7) > 4[1,3]+4 > 8 > 成功
GM
成功。効果量をどうぞ。
”フー”
1d6 (1D6) > 4
マオマオ
* ティーセットなしで~す
マオマオ
2D6 (2D6) > 9[6,3] > 9
GM
成功!
GM
*『異端信仰』は……心の性感帯ではございません。
[ マリユス ] 異端信仰 : 0 → -1
[ ”フー” ] HP : 19 → 18
マリユス
そう、あの魔王は全ての人と魔族の幸福を約束すると。
マリユス
そういって
マリユス
いって
マリユス
しかし……ならば
マリユス
なぜ彼は、死ななければならなかったのか
マオマオ
「魔王というのは、異端の王ですか」
マオマオ
フィンガーフードをつまむ。
マリユス
「……ええ。我が国では大精霊を信仰しており……魔族の王、魔王とは対立関係にあります」
マオマオ
ちらりと腕を見る。その服の下の傷跡を思い出す。
マリユス
「…………」
マオマオ
「魔王は、あなたを救いましたか?」
マリユス
「…………」
マリユス
そう。
信仰は心の崩壊を繋ぎとめこそすれ、この身を救ってはくれない。
マリユス
じっと、その目を見る。
マオマオ
「あなたの世界の神がどうかは知りませんが」
マリユス
沈黙。
マオマオ
「神は、見守ることしかしない」
マリユス
眼を閉じ
マリユス
うつむく。
マオマオ
「側で手を握ることも、励ますことも、微笑むことすらしない」
マオマオ
「どんなに苦しむ人がいても、助けるべき人がいても」
マオマオ
「ただ、見ているだけだ」
マオマオ
短い沈黙。
マオマオ
立ち上がる。
マオマオ
「まぁ、でも」
マオマオ
「何もしないと分かっているから、裏切られないとも言える」
マオマオ
片手を上げて、軽く手を振る。
マオマオ
「料理ごちそうさま、少し気が晴れました」
マリユス
顔をあげ、見る。
マリユス
「それは……」
マリユス
「何よりです」
マリユス
にこりと
マリユス
今まで、見せたことのないような
マリユス
柔らかな、あるいは冷ややかな笑みで
マリユス
その姿を見送った。
GM
裏切りだろうか。
最初から偽りでしかなかったもの。
GM
愚かだろうか。
最初から誤りでしかなかったもの。
GM
ああ、でも、そのくせに。正しいような顔をするから。
GM
自分ばかりが悲しいような。自分ばかりが辛いような。
GM
みんながそうするから――ここにもそこにも、疵がつく。
マリユス
シュエシュエ
仰臥する黒いドレスの貴婦人の下。
シュエシュエ
砕けかけた足を引きずって、壁までなんとか這いずる。
シュエシュエ
みじめだ。
シュエシュエ
生きていた頃だって、こんなに惨めに思ったことはない。
シュエシュエ
今の自分は生きていた頃よりももっと、ずっと醜く、汚い。
シュエシュエ
こんなはずじゃなかった。
シュエシュエ
嫁にとるにはみっともないからと、望みもしないのに顔を変えられて。
シュエシュエ
でも、その顔が案外きらいではなくて。
シュエシュエ
壁を頼りに立ち上がり、よろけながら歩き出す。
シュエシュエ
床に腐汁を垂らしながら。きれいなものをよごしながら。
シュエシュエ
そして引き合わされた”夫”の顔は、美しかった。
きっと自分が生きている間、これほどのひとに出会うことはないだろうと思えるほど。
シュエシュエ
死体に恋をしてしまうほど。
シュエシュエ
さみしがっている魂を、慰めてやりたいとおもうほど。
シュエシュエ
それを。その気持ちを。恋を。
シュエシュエ
踏みにじられていた。そうとは知らぬ間に利用されていた。
シュエシュエ
その恋の残滓だけをばかみたいに信じて、ばかみたいに縋っていたのに。
シュエシュエ
「…………」
シュエシュエ
ぐず、と膿が垂れる。腐汁が鼻を詰まらせる。
シュエシュエ
みじめだ。
シュエシュエ
ほんとうの王子様は、もう迎えに来ない。
シュエシュエ
立ち止まる。痛むはずの無い胸を押さえる。
シュエシュエ
頬に触れた大きな手の感触が、なぜだかひどく恋しかった。
”フー”
マリユスが出ていく音と、浴室の扉を開くのはほぼ同時。
”フー”
裸になり、シャワーのバルブをひねる。
”フー”
身にまとうようにしみついた腐臭は衣服を脱ぎ、湯で流す程度では落ちていかない。
”フー”
体表を流れる湯は滞ることなく上から下へと滑り落ちる。
”フー”
長い手足としなやかな肉体。
”フー”
シュエシュエのものとは違う温かいからだ。
”フー”
マリユスのものとは違う傷一つないからだ。
”フー”
湯の流れるままにしていたが、手探りで石鹸置きをさぐる。
”フー”
指先の感触で石鹸を確かめると少しばかり力をこめる。
”フー”
半分の大きさの石鹸を、さらに両手で。
”フー”
そしてそのまま体を洗う。
”フー”
生き残るためにできることはもうほとんど手をつくした。
”フー”
マリユスとの情報交換も、相手の夫妻の……いや夫妻ではなかったが。
ともあれ向こうのペアのことも、まあ十分。
”フー”
シュエシュエ。夫妻の、妻。
そう騙されていた、動く死体。
”フー”
シュエが疵に触れた時、やけに惹かれるものがあった。
”フー”
それはきっと、自分の疵に関わるものだからだと思った。
”フー”
だから気になった。明らかに自分が自分でないというのに、自我と自己を保っているのは何故なのかと。
”フー”
もしかしたら、自分が自分でなくなった時にも自己を保てる何かがあるのではないかと。
”フー”
だからもう一度、シュエの疵に触れてみた。
”フー”
どちらかというと、あの男の隣に何もわからず立っているのが嫌だったのだろうか。
”フー”
そしてあの女はすべてに気付いた。
”フー”
あの男があの女のことを見ているわけではないということに。
”フー”
そのあとのことはどうなったのか。
”フー”
「……こっちについてくれたら、いいんだけどなぁ」
”フー”
そうすれば生き残りやすいのに。
”フー”
もしうまくいけば
”フー”
ストックが2人に増えるのに。
”フー”
体の石鹸を洗い流しながら、笑う。
”フー”
ただ一人、生きることだけを。

GM
最後。マリユスの手番。
マリユス
*フーの疵を舐めます
マリユス
10:ゲストルーム ろうそくの灯が揺れる、窓のない広い部屋。ベッドも椅子も、緋色のベルベットで覆われている。
マリユス
ノックもなく扉が開かれる。
マリユス
いささか乱暴に。
マリユス
不甲斐ない、不甲斐ない、不甲斐ない。
”フー”
乱暴な扉の音に浴室の扉から顔をのぞかせる。
マリユス
同情の一つも誘えない。
欲情の一つも誘えない。
マリユス
扉を閉め、同室の男の顔を見る。
”フー”
明らかに苛立ちながら帰ってきた相棒を前にしても、浴室から出てきた男の表情はいつもとかわらない。
マリユス
少し体温が高い。
呼吸も落ち着いていない。
マリユス
目を閉じて一呼吸。
”フー”
ズボンまでははいているが、熱いのかその体からは湯気があがる。
マリユス
「…………失礼、いたしました」
”フー”
「いやいや」
”フー”
気にしていないとでも言いたげに首を振る。
”フー”
「よくないことが?」
マリユス
「いえ……」
マリユス
額に手を当てる。
マリユス
「…………」
マリユス
「少し」
”フー”
「ふん」
”フー”
「よければ聞くけど」
マリユス
「…………」
マリユス
「少し……」
マリユス
「意地悪を言われただけですから……」
”フー”
表情はそのままに、どこかきょとんとしたような間が流れる。
”フー”
「?」
マリユス
「何でもありません」
”フー”
「いやいや、ははは。なんでもないはないだろー」
マリユス
「…………」
マリユス
「う……」
”フー”
髪を拭きながらベッドまで歩くと腰かける。
マリユス
扉の前に立ち尽くしたまま
マリユス
「……彼が」
マリユス
「廊下で、泣いていて……」
”フー”
「へぇ、あの女となにかあったのかなぁ」
マリユス
「わかりきったことを聞くのは良くありませんよ」
マリユス
その態度に、少し落ち着いたように
マリユス
肩を竦めて自分のベッドへと
マリユス
スカートを広げて腰掛ける。
”フー”
「さぁ、俺の前でだけそれっぽくふるまってただけかもしれないからさ。本当に効果があったならなによりだ」
マリユス
「…………」
”フー”
腰かけるマリユスをじっと見ている。
マリユス
少し、反応が鈍い
”フー”
パン、と何かを思いついたように自分の膝をうつ。
マリユス
ちょっとびっくりする
マリユス
「…………おかげで」
マリユス
「私の方は、逆に余計な事まで」
マリユス
「話してしまいましたよ」
”フー”
「”向こう”でのこととか?」
マリユス
「そんなところです」
マリユス
「…………」
マリユス
何かを考えているような、間が
マリユス
言葉の合間に差し込まれる
”フー”
「何が、気になる?」
マリユス
「…………」
”フー”
「俺が何を考えてるとかとか?」
”フー”
「もしかして信頼されてないかもって?」
マリユス
「いえ……」
マリユス
赤い爪の指先が太ももの上でついたり離れたりする。
マリユス
少しだけ下を向いて
マリユス
顔をあげ
マリユス
「裏切り……」
マリユス
「あの、二人は……」
マリユス
「…………」
マリユス
「…………」
マリユス
「どちらを、殺すつもりで……」
”フー”
「ふぅん」
”フー”
「気になる?」
マリユス
「…………」
マリユス
「即答していただけないという事はわかりました」
”フー”
「………」
マリユス
*フーの疵『執着心』を才覚で舐めます
GM
横槍はございますか?
シュエシュエ
*横槍します。
GM
はい、能力値のチョイスから。
シュエシュエ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
シュエシュエ
*ティーセット使用します。
GM
贅沢!
シュエシュエ
2D6+4+2>=7 (2D6+4+2>=7) > 3[2,1]+4+2 > 9 > 成功
GM
では効果量。
シュエシュエ
1D6 (1D6) > 5
マリユス
*ティーセット使用します
[ シュエシュエ ] HP : 20 → 19
[ シュエシュエ ] ティーセット : 1 → 0
[ マリユス ] ティーセット : 1 → 0
マリユス
2d6+4+2-5>=7 才覚+ティーセット (2D6+4+2-5>=7) > 5[2,3]+4+2-5 > 6 > 失敗
GM
失敗!
マリユス
「…………」
マリユス
「私は」
マリユス
「…………」
マリユス
目を伏せる
”フー”
「殺すだけなら」
”フー”
「男の方がたやすいだろうなぁ」
マリユス
「死体ですよ?」
”フー”
「なにがだ?」
”フー”
わかっている、といいたげな口ぶり。
マリユス
「同じことをするつもりですか」
”フー”
「ははは!まさか!」
”フー”
「生きるために過ぎない」
”フー”
「俺の手に、人は収まらない」
”フー”
「俺は俺が生きるだけでいっぱいなんだ」
”フー”
「”ストック”は多い方がいいだろぉ?」
マリユス
「随分と……自信がおありですね」
”フー”
「死にたくないからなぁ」
”フー”
「死んでしまうと、自分じゃなくなる」
”フー”
あのシュエシュエという女のように。
マリユス
「…………」
マリユス
立ち上がり、目の前までいって
マリユス
「私だって死にたくない」
”フー”
「じゃあ俺を信じてついてくればいい」
マリユス
男の首に手を伸ばす。
”フー”
その手を咎めることはない。
”フー”
自信があるのかたかをくくっているのか。
マリユス
指先で、なぞるように耳の後ろまでを撫でる。
”フー”
ふ、とくすぐったそうな笑いが漏れる。
マリユス
「信じてついてくればいい……?」
マリユス
「私は……貴方の……」
マリユス
「何を信じれば、いいんですか」
”フー”
「そうだなぁ」
”フー”
「例えば今」
”フー”
そういうが早いか、添えられた手を絡め取り手頸を力ずくで抑え込むと首を抑え込むようにベッドへ押し倒す。
”フー”
手首を抑え、首に手をかける。
マリユス
「う……!」
マリユス
とっさに反応できない。
そういう訓練はしていない。
”フー”
手首を抑える力はしばりつけるように強い。
覆いかぶさるからだがマリユスの自由を奪う。
マリユス
「…………」
マリユス
暴れるようなことはない。
マリユス
少し、息が苦しい。
”フー”
「例えばこんな風に」
”フー”
首にかけた手にそっと力をこめる。
”フー”
「いつでも、殺せる」
マリユス
「ぐ……っ、う……」
マリユス
口を開く
マリユス
呼吸を忘れないように
”フー”
ははは!といつもの顔で、いつもの声色で笑う。
マリユス
「…………」
マリユス
「知ってますよ」
マリユス
ぎりぎりと締められる手首が痛い。
”フー”
「うんうん、だよねぇ」
”フー”
「マリユスはわかってるもんなぁ」
マリユス
「…………」
マリユス
「……付き従うのには慣れています」
マリユス
「……奉仕でも援護でも、好きに使ってくださってかまいません」
マリユス
「ええ、私は死にたくないんです」
”フー”
「んふふ」
”フー”
いつものように笑うと、ぱっと両手をひらき自分の体を起こす。
”フー”
「別にさ、そこまでじゃあなくていいんだよ」
”フー”
「ただ、いつでもできるのにそうしないってことを信じちゃあくれないかなぁ」
マリユス
「…………」
”フー”
なにかを促すように小首をかしげる。
マリユス
体を起こして、手を膝の上に持ってくる。
”フー”
「まああと」
”フー”
「俺もマリユスも生きたいってところは合致してるからね!」
マリユス
溜息。
マリユス
口を開きかけて、一度閉じて。
マリユス
「…………それくらいなら」
マリユス
「信じてさしあげても構いませんが」
”フー”
「ありがたいね」
”フー”
「嬉しくて泣いちゃいそうだ」
マリユス
「そういうことを言うから信用できないんですが?」
”フー”
「ははは。信じてもらうって難しいものでしょ」
マリユス
「…………」
マリユス
「ふん」
マリユス
少し拗ねたように鼻を鳴らして目をそらす。
”フー”
「んっふっふ」
”フー”
「少しは気が晴れたかな?」
マリユス
「…………」
マリユス
「…………」
マリユス
「はぁ」
マリユス
「さっさと裁判を終わらせて戻りましょう」
”フー”
「それがいい」
マリユス
ごろんとベッドに転がる
”フー”
「おやすみ、マリユス」
”フー”
いつもの笑顔で声をかける。
マリユス
「…………」
マリユス
「バーカ」
マリユス
目を閉じた。
GM
心は移ろうもの。
GM
では、信頼は?信仰は?願いは?祈りは?言葉は?行いは?恋は?愛は?嘘は?真は?
GM
何を手に取ればいいだろう。
GM
命以外に欲しいものなんてないのなら――
GM
どうして、疵がつくのだろう。