GM
駅前に蔓延る無関心。
ただお互いの姿だけが目に留まる。
GM
冬の寒さを切って、歩み寄る。
GM
もしもどちらかが約束を破れば、あなたたちはどこにも行かなかったかもしれない。
そのまま家に帰って、また昨日の続きを始めたかもしれない。
GM
だが、そうはならなかった。
GM
足元だけを見つめて行き過ぎていく人びとはだれも知らないことだが、
GM
……あなたたちは今日、死にに行くのだ。
GM
『心中』
GM
一人ではできない特別なこと。
GM
GM
では、早速ですが自己紹介から。
GM
PC1、殊縁 卿。ハンドアウトはこちら。
GM
【PC1】ハンドアウト
あなたは何もかもが嫌になってしまった。
だが、ひとりで死ぬのはどうしようもなく怖い。
あなたの【使命】はPC2と一緒に死ぬことだ。
あなたは、PC2に対して任意のプラスの【感情】を取得している。
殊縁 卿
殊縁 卿。
殊縁 卿
職業、占い師。
殊縁 卿
母の残した道具と、知識で
殊縁 卿
公園、路上の軒下、etc.
殊縁 卿
みちゆくひとの人生相談にのっている。
殊縁 卿
でも、そう。母ほどうまく、未来が見えない。
殊縁 卿
だから副業で、ちょっとした俳優みたいなこともしている。
殊縁 卿
その、母が亡くなった。
殊縁 卿
丁度、一年前のことだ。
殊縁 卿
物取りに突き飛ばされて、即死。
殊縁 卿
別に、後追いをしようというわけじゃない。
殊縁 卿
ただ、一年を迎える少し前に
殊縁 卿
そのことを思い出して
殊縁 卿
生きる理由がわからなくなっただけ。
殊縁 卿
公園のベンチで手首を見下ろして、数刻。
殊縁 卿
どうしても、そこに刃物をあてる事ができなかった。
殊縁 卿
痛いからとか、迷惑だとか、もっともらしい理由がぽんぽん浮かんできて
殊縁 卿
どうしようもなく、怖くなって。
殊縁 卿
そんなとき、ベンチの板がわずかに軋んだ。
殊縁 卿
それで、隣をみると君がいて。
殊縁 卿
思わず、こう言っていた。
殊縁 卿
「ねえ、一緒に死んでくれないかい?」
殊縁 卿
その時、僕は、たぶん。
殊縁 卿
大海原に浮かぶ小舟の上にひとり
殊縁 卿
ああ、この人なら一緒に
殊縁 卿
沈んでくれるのかもしれないと思ったのだろう。
殊縁 卿
利藤 すずに【共感】を獲得します。
GM
では、続けてPC2、利藤 すず。ハンドアウトはこちら。
GM
【PC2】ハンドアウト
あなたはある日、PC1に「一緒に死のう」と持ちかけられた。
別に死ぬ気はなかったが、PC1とならそれもいいかもしれない。
あなたの【使命】はPC1と一緒に死ぬことだ。
あなたは、PC1に対して任意のプラスの【感情】を取得している。
利藤 すず
利藤 すず。
利藤 すず
職業、高校生。
利藤 すず
初対面であっても、利藤、と名乗ると驚いた顔をされる。
そのあたりの銀行にも、えんぴつにも書いてあるような名字だ。
利藤 すず
生まれたときから不自由のない暮らし。
両親はもとより、周囲の愛情を一身に受けて育った。
この身体にも人生にも、欠けているものなどなにひとつない。
利藤 すず
なにひとつ。
利藤 すず
欲しいものはなんでも手に入るし、やりたいことはなんでもやらせてもらっている。
わざわざ反抗する理由もなければ、わがままを言う必要もない。
利藤 すず
だから、死のうと思ったことなんて一度もない。
利藤 すず
今日もお手伝いさんのつくった美味しい朝ごはんを食べて、学校へ行って。
お弁当を食べて、まじめに勉強をして。
利藤 すず
帰り道、少しだけ寄り道をした。
利藤 すず
自販機で買ったあたたかいココアを握って。
ベンチに腰掛けた。
利藤 すず
そこにあなたがいただけのこと。
利藤 すず
ぱち、と音がするくらい大きく瞬いた。
利藤 すず
「え」
利藤 すず
「おもしろ」
利藤 すず
「いいですよ」
利藤 すず
そのとき、私は、たぶん。
利藤 すず
どこへも辿り着かない迷宮の中に、ひとり
利藤 すず
ああ、この人なら一緒に
利藤 すず
出口を、見つけられるかもしれないと思ったのだろう。
利藤 すず
殊縁 卿に【狂信】を獲得します。
GM
GM
あなたがたはよく晴れた冬の日、近くの駅で待ち合わせをしました。
GM
こんな駅、使ったことなかった。
GM
一度も利用したことのない路線、行ったことのない駅。
GM
あなたがたが知っているのは、終着駅は海の近くだということだけです。
GM
あなたがたの乗る電車は、サイクルの始めに駅に到着し、終了時に発車します。
GM
駅のハンドアウトはそのサイクルに対応したものしか調査の対象にできません。
GM
また、到着する駅の名前は、駅命名表を振って決定します。1d12をふたつ。
GM
*駅命名表1
1:潮
2:海
3:凪
4:波
5:大
6:魚
7:静
8:湊
9:渦
10:水
11:青
12:美

*駅命名表2
1:浜
2:ヶ丘
3:崎
4:守
5:田
6:島
7:浦
8:町
9:橋
10:宮
11:津
12:ヶ井
GM
続けてシーン表はこちら。
GM
*海へ向かう電車シーン表(2d6)
2:なかなか電車のドアが開かないと思ったら、開閉ボタンを押し忘れていた。シーンプレイヤーは《恥じらい》で恐怖判定を行う。
3:こうして電車に乗っていると、昔のことを思い出すような気がする……。
4:暖房が直に当たってふくらはぎが熱い。効きすぎじゃないだろうか?
5:ポケットの中で携帯電話が震えた気がする。
6:なんとなく窓を開けてみた。暖房で火照った頬に風が心地よい……いや、普通に寒い。
7:座席の下に缶コーヒーが置いてある。マナーの悪いやつもいたものだ。
8:手すりに引っかけられた持ち主不明のビニール傘。天気予報はどうだったっけ……?
9:窓の桟の中で蜻蛉が死んでいる。
10:カンカンカンカン--遠くからかすかに踏切の警報音が聞こえる。
11:憂鬱な曇天から、綿ぼこりのようなものがちらほらと舞い落ちてくる。雪だ。
12:網棚から何か落ちてきた。これは……お守りだ。シーンプレイヤーはお守りを1つ獲得する。
GM
このセッションでは、基本的に再訪を行うことはできません。
サイクルの始めにはシーン表を振ってください。
GM
では、最初に公開されるハンドアウトが2つ。
GM
【大学ノート】ハンドアウト
網棚の上に載せられた大学ノート。
誰かの忘れ物だろうか?
GM
【音楽プレイヤー】ハンドアウト
座席に落ちていた音楽プレイヤー。
誰かの忘れ物だろうか?
GM
あとは、名前が決まり次第、最初の駅のハンドアウトも公開されます。
GM
ということで、お二人で電車に乗り込みましょう。
GM
殊縁 卿
見知らぬ改札を通り、ホームへ。
殊縁 卿
普段使うのと異なり、人は少なく、ゲートもない。
殊縁 卿
君は来るだろうか。
殊縁 卿
二言、三言、言葉をかわしただけの君。
殊縁 卿
名前も聞いていない。
殊縁 卿
両手をポケットに入れて、白線ギリギリに立つ。
殊縁 卿
それ以上は、足が前に出ない。
利藤 すず
ホームに、数日前と同じ、清潔にアイロンがけされた制服姿で現れる。
利藤 すず
学生鞄と、コンビニの袋を――それも大袋を――両手に提げて。
利藤 すず
「いたいた」
利藤 すず
「すみません、待ちました?」
殊縁 卿
「あ」
殊縁 卿
「待ってないよ、僕もぎりぎり」
殊縁 卿
待ち望んだ声に、振り向く。
殊縁 卿
その手に下げた袋に、視線が行く。
殊縁 卿
「なあに、それ」
利藤 すず
「よかった。こんな駅来たことないから間違えてたらどうしようって不安で――」
利藤 すず
すこしばかり興奮した様子で口を走らせて。
利藤 すず
「あ、これ?」
利藤 すず
「お弁当と、おやつ」
利藤 すず
飲み物もありますよ~、と。なんでもないコンビニのお茶を出して見せる。
利藤 すず
「結構長旅になりそうだから」
殊縁 卿
「ふふ」
殊縁 卿
近づいて、袋を持つ手に触れる。
殊縁 卿
「僕、持とうか?」
利藤 すず
僅かな逡巡の気配。
利藤 すず
「……大丈夫です、どうせすぐ電車に乗るんだし」
利藤 すず
ホームの時計に目をやる。
GM
まもなく、乗ろうと待ち合わせた電車の時間。
GM
かちり、と長針が動き。
GM
たたん、たたん……
GM
軽い音でホームに入ってくる、一両編成の小さな電車。
GM
ワンマン運転の運転席から運転士が出てきて、車両の扉が開く。
殊縁 卿
「いこうか」
利藤 すず
「すごい、ほんとに一両だ」
殊縁 卿
「僕も初めて見た」
殊縁 卿
触れた手が離れる。
利藤 すず
「初めてだらけです」
殊縁 卿
右足が白線を越えられない。
利藤 すず
「……」
利藤 すず
一度は離れた手を取る。引いて、乗る。
GM
あなたがたが乗り込むと同時に、扉が閉まる――
GM
『発車します。揺れますので、ご注意ください……』
GM
あなたがたは、互いの【居所】を獲得しました。