GM
時計の針は、一体どこで間違えた?
24時間くるりと廻り、同じところへ元通り。
GM
時計の針は、一体どこで間違えた?
1秒先の正しい世界、あなたを置いていっちゃった。
GM
昨日も、明日も、同じ今日。
GM
雲の形も吹く風も、流れる川の一滴も。
繰り返す、繰り返す――
GM
inSANe 『14時32分』
GM
――ここは、永遠の一日。
GM
GM
では、早速ですが順番に自己紹介していただきましょう。
GM
PC1から。
GM
ハンドアウトはこちら。
GM
◆PC1
あなたはとある駐車場に停まった自分の車の運転席でうたた寝から目覚めた。誰もいない街で24時間経つと、スイッチを切り替えたように再び同じ日、同じ時間、同じ場所で目覚める。あなたの使命は『この一日から脱出する』ことだ。
晴張 希海
晴張 希海、26歳。
大学の友人に誘われたのがきっかけで、ホストクラブ『Starfish』でなんとなくホストをしている。
晴張 希海
源氏名はのぞみん。そこそこ固定客もいて、指名4位~6位くらいをのらくらと。
誕生日は結構頑張ってもらったりするんだけどね~。
晴張 希海
いや、真面目に公務員とかになろうと思ったときもあったんだけど、大学出て初任給25万とか無理。
それ俺の客が1日に落とす金の何分の1よって話で。
晴張 希海
ま、そういう感じでだるく生きてたから、バチでもあたったんかな~って。
晴張 希海
愛車はミント色のラパン。可愛いっしょ。
始めたての頃にお金貯めて一括で買ったんよ。
晴張 希海
新しかないけど、快適よ?
だからまあ、ここで起きるのはそんなに嫌いじゃない。
晴張 希海
寂しいけどね。
晴張 希海
https://character-sheets.appspot.com/insane/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY0s6dnwUM
GM
ありがとうございます。
GM
では、続けてPC2。ハンドアウトはこちら。
GM
◆PC2
あなたは自宅の座椅子でうたた寝から目覚めた。誰もいない街で24時間経つと、スイッチを切り替えたように再び同じ日、同じ時間、同じ場所で目覚める。あなたの使命は『この一日から脱出する』ことだ。
堆橋 みやび
堆橋 みやび、20歳。
堆橋 みやび
ありふれた大学2年生。
なんとなく大学に行って、なんとなく特別なことも無いまま流されるみたいに生きている。
堆橋 みやび
それがフツーだし、不満もないし。
堆橋 みやび
だから、今回のこれだって別に困ってないけど。
堆橋 みやび
来週の新商品のガムは食べたいかな。
堆橋 みやび
https://character-sheets.appspot.com/insane/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY6LnInAUM
GM
ありがとうございました。
GM
では、最後にPC3。ハンドアウトはこちら。
GM
◆PC3
あなたは近所の公園の木陰でうたた寝から目覚めた。誰もいない街で24時間経つと、スイッチを切り替えたように再び同じ日、同じ時間、同じ場所で目覚める。あなたの使命は『この一日から脱出する』ことだ。
鴨川 水歩
はーい!鴨川水歩、25歳です!
鴨川 水歩
広告系の会社で事務やってる、ふつーのOLさん。
鴨川 水歩
自慢じゃないけどちょっと多趣味!
ゲームとかも結構やるし、漫画も読むし。
RTAとかも齧ってるんだぜ~。意外でしょ?
鴨川 水歩
身体動かすのも好きだな。筋トレとか、ヨガとかピラティスとか。
カメラも好き。写真撮りに静岡とか行っちゃう。
鴨川 水歩
最近はアウトドアもいいよね~。涼しくなってきたし。
鴨川 水歩
だからけっこう、この状況って……良いんじゃない?と思ったりするよ。
現代人には時間が足りてなーい!一日24時間じゃ足りないんだもん。
鴨川 水歩
ポジティブシンキングでいこ!ね。
鴨川 水歩
https://character-sheets.appspot.com/insane/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYhdH4owUM
GM
ありがとうございました。
GM
では、お三方の自己紹介が出揃ったところで……導入フェイズです。
GM
GM
*導入フェイズ 晴張 希海
GM
14時32分――あなたはふと、うたた寝から目覚める。
GM
昨日と同じ、よく晴れた昼下がり。
明日もきっと、同じように晴れるだろう。
GM
何故なら、昨日も、一昨日も、三日前も、その前も……ここでは、雲の形さえ変わることなく同じ一日が繰り返されているからだ。
GM
そんな誰もいない街で、もう何度目覚めたか。
GM
今日もあなたは目覚める。
晴張 希海
はっと、目が覚めて。
晴張 希海
最初に腕時計を見る。
晴張 希海
目覚める時間はいつも同じ。
晴張 希海
フロントガラスから差し込む昼の光だけで「ああ、またか」なんて思う。
晴張 希海
最初は普通に店出勤したら誰もいなくてめちゃ焦ったっけ。
晴張 希海
街中見て、それで
晴張 希海
悪い夢だって思ってたのは何回目までだっけ。
晴張 希海
北に向かって車走らせたり、南も東も西も。
山道も海沿いも、行けるとこまでいってみたりして
晴張 希海
適当なパーキングエリアとか、樹海とかで寝ても
晴張 希海
なーんもかわらんし。
晴張 希海
そのうち、なんか、やることもなくなってきて
晴張 希海
「あ~……」
晴張 希海
「今日は何食おっかな……」
晴張 希海
目を閉じてため息をつく。
晴張 希海
寂しく『生きる』ことの繰り返し。
GM
『今日』もあなたは生きている。変わらぬ『今日』を。
GM
そこに変化が現れるのは、もうすぐ。
GM
GM
*導入フェイズ 堆橋 みやび
GM
同日、14時32分――あなたはふと、うたた寝から目覚める。
堆橋 みやび
ぼんやりと意識が浮上する。
堆橋 みやび
一体何をしていたんだっけ。
堆橋 みやび
思い出さなければいけないほど大切な用事なんてあんまりないな、なんて。
堆橋 みやび
諦めて欠伸をひとつ。
堆橋 みやび
こうなって一体どれくらいの時間が過ぎたんだろう。
堆橋 みやび
食べたいガムの味が減っていく。
堆橋 みやび
前まであんなにアレ食べたい、これ食べたいって思ったのに。
堆橋 みやび
積み重なるゴミの分だけ、食べ慣れたガムの分だけ。
堆橋 みやび
きっとあたしはここにいる。
堆橋 みやび
まるで噛み続けて味のなくなっていくガムみたいに。
堆橋 みやび
薄れていく日々の印象の中にいる。
堆橋 みやび
いつも同じルートを歩く。
堆橋 みやび
変わらない街を彷徨う。
堆橋 みやび
ずっと同じ、ずっと変わらない。
堆橋 みやび
そんな、味のしない時間を送っている。
GM
『今日』もあなたは薄れていく。あなただけが。
GM
そこに誰かが現れるのは、もうすぐ。
GM
GM
*導入フェイズ 鴨川 水歩
GM
さらに同日、14時32分――あなたはふと、うたた寝から目覚める。
鴨川 水歩
硬いベンチが背に当たっている。
俯いて、こくり、こくり、船を漕いでいた。
鴨川 水歩
はた、と目を覚ます。
はじめに映るのは下ろしたてのミュールの爪先。
鴨川 水歩
スカート。それからサロンに行ったばっかりの爪。
鴨川 水歩
ほう、と一つ息を吐いて、伸びをする。
鴨川 水歩
今日は何をしようと思ってたんだったかな。
鴨川 水歩
とりあえず、服屋でも見に行くか。今日はあのお店のにしよう。
鴨川 水歩
誰もいない街を悠々と歩く。
静かな街に吹く風は穏やかで、心地良い。
鴨川 水歩
”昨日”とおなじ。
鴨川 水歩
ひとり、自由で気ままだ。
鴨川 水歩
ひとりでいるなら、哀しむ必要だってない。
鴨川 水歩
アスファルトの上をはだしになって歩いたって。
鴨川 水歩
だれも咎めやしないのだ。
GM
『今日』もあなたは笑っている。一人だからこそ。
GM
そこに何かが訪れるのは、もうすぐ。
GM
GM
では、マスターシーンとしてお三方の合流シーンをしましょう。
GM
一番アクティブにいろんなとこ動いてそうなのは水歩さんかな。
鴨川 水歩
イェイ 元気に裸足で歩いています
GM
ほぼ同じルートを周回しているのがみやびさんで……今に至って一番行動半径が狭そうなのが希海さんかな……
晴張 希海
飯調達しにコンビニとかいきま~す
GM
じゃあ、まずは水歩さんにみやびさんを回収してもらおう。
GM
さらにその後、希海さんを見つけましょう。
GM
軽く街の描写をしていきますか……
GM
歩行者用の信号が、赤から青に変わる。
GM
裸足の足裏に、あたたかいアスファルト。
GM
眼の前のマンションの3階に、窓の開いたままの部屋。
その隣のコンビニでは、カレーフェアの華やかな装飾がとれかけている。
GM
誰も窓を閉めないし、誰もその剥落を直さない。
GM
あなただけがいる。
GM
そのはずだった。
GM
しかし、今まで誰も……どころか、生きて動くものをひとつたりと見出だせなかった視界に。
GM
誰かの後ろ姿。
鴨川 水歩
ぎょ、と目を瞠る。
鴨川 水歩
え?と口を開けてみたが、第一声は声にならなかった。
堆橋 みやび
足音がして、足を止める。
堆橋 みやび
振り返って見えたのは、アスファルトの素足。
鴨川 水歩
目を擦ってから、あ、化粧落ちる、とくだらないことを考えた。
堆橋 みやび
視線を下げれば、自分の黒い靴。
堆橋 みやび
むこうの、白い素足。
堆橋 みやび
「あの」
堆橋 みやび
「こんにちは?」
鴨川 水歩
「へあ」
堆橋 みやび
口を衝いたのは疑問符付きのあいさつで。
堆橋 みやび
それに返ってきたのは、
堆橋 みやび
「鳴き声?」
鴨川 水歩
「あ、あ、え?こん、にちゃ」噛んだ。
堆橋 みやび
「こんにちゃ」
鴨川 水歩
「……いやっ、いやっ、いやいや、鳴いてない鳴いてない」
堆橋 みやび
す、と手を上げる。挨拶のポーズ。
堆橋 みやび
「鳴き声じゃないんだ」
堆橋 みやび
まばたきひとつ。
鴨川 水歩
「…… …… ヒトじゃん……」
鴨川 水歩
どう見ても。
鴨川 水歩
あなたもわたしも。
鴨川 水歩
「……え~~……?」
堆橋 みやび
「ヒトだけど」
堆橋 みやび
「ヒトじゃない方が良かった?」
鴨川 水歩
「いや、そんなわけはないんだけど、だって」
鴨川 水歩
近づく。ぺたぺたと素足の音が鳴る。
鴨川 水歩
じっと覗き込む。
堆橋 みやび
その目を見る。
鴨川 水歩
「……幻覚……じゃなさそうだな~~……」
堆橋 みやび
「触ってみてもいいよ」
堆橋 みやび
頬を差し出す仕草。
堆橋 みやび
指先で示している。
鴨川 水歩
「えっ、いいのぉ?!」ぺたぺた……
堆橋 みやび
ぺたぺた。
堆橋 みやび
触られている。
鴨川 水歩
「おお……つるもちふわ…… この張り……」
鴨川 水歩
「えっ、ほんとに人間だな、びっくりしちゃった」スン
鴨川 水歩
うわ~うわ~と言いながら周囲をぐるぐるまわる。
鴨川 水歩
「もしかして、あなたもずっとここでぐるぐるしてたの?」
堆橋 みやび
「犬みたい」
堆橋 みやび
それを眺めて、一言ぴしゃり。
堆橋 みやび
「うん、ここにずっといる」
堆橋 みやび
「そうだね、ちょうど」
堆橋 みやび
そちらを視線で追う。
堆橋 みやび
「今のおねーさんみたいに」
堆橋 みやび
「ぐるぐるしてた」
鴨川 水歩
「……ワン!」
鴨川 水歩
「え~?ぜんっぜん気づかなかったなあ、いるなら言ってくれればよかったのに」
鴨川 水歩
「そう、あたしもねえ、ぐるぐるしてたのよ」
鴨川 水歩
「え~?これまで奇跡的にすれ違わなかったってことお?」
鴨川 水歩
「それはそれで奇遇だな~」
鴨川 水歩
やっぱりぐるぐるしている。
鴨川 水歩
それからひたりと立ち止まって。
鴨川 水歩
「ねね、どうせヒマでしょ?あっちのケーキ屋さん行ったことある?」
鴨川 水歩
「カフェスペースあるし、そっちで話そ!」
鴨川 水歩
決まり!と手を合わせると、歩き出す。
鴨川 水歩
はだしだ。
堆橋 みやび
「ケーキ屋さん」
堆橋 みやび
行ったことがない。
堆橋 みやび
この繰り返しの中で、そういうところへ足を伸ばそうとも思わなかった。
堆橋 みやび
この声がなければ。
堆橋 みやび
「行く、待って」
堆橋 みやび
その足音に着いて行く。
堆橋 みやび
自分の世界に足音が一つ増えた。
GM
水歩の案内した先には、小さなケーキショップ。
GM
小洒落たテラスにテーブルがふたつ。覗き込んだ店内にふたつ。
ショーケースの中には、きらきらのフルーツが乗ったタルトに、ショートケーキ、チーズケーキ、ミルフィーユ……陶器に収まったプリン、マドレーヌにクッキー……
GM
ケースの右手の板が上がるようになっていて、普通ならば店員のいるであろうスペースにも入れる。
鴨川 水歩
ずかずかと乗り込んでいく。勝手知ったるうごき。
鴨川 水歩
「どれにする~?」
鴨川 水歩
「あたしはねえ、ミルフィーユがおすすめかな~」
鴨川 水歩
ひとつ、ふたつ、取り出して、イートイン用に用意されている皿に並べる。
堆橋 みやび
「じゃあそれで」
堆橋 みやび
慣れていないなら慣れている人に任せた方がいい。
堆橋 みやび
ミルフィーユは好きだし。
堆橋 みやび
あの層の重なり方がいいし。
堆橋 みやび
バランスがね。
鴨川 水歩
「よっしゃ~!まいどあり!」
鴨川 水歩
外へ。
鴨川 水歩
今日も変わらず良い天気だから。
GM
もうずっと変わらない晴天。
GM
永遠に変わらないかもしれない晴天だ。
GM
テラス席には、赤と白のひさしが程よく影を作っている。
堆橋 みやび
八百屋さんみたいだななんて思いながら。
堆橋 みやび
外へ歩く足音へ続く。
堆橋 みやび
影の向こうに陽の気配がする。
堆橋 みやび
あの下に出るのはさぞ眩しかろうと思う。
鴨川 水歩
氷をふんだんに入れたアイスティーだって二人ぶん持ってきてしまう。
椅子を引き寄せて、まるで自分の家みたいに座った。
堆橋 みやび
「ありがと」
堆橋 みやび
貰うのを疑わない発言。
鴨川 水歩
もちろんあげるとも。そのための二人分。
鴨川 水歩
飲み物を二人分用意するのなんて、いったいどのくらいぶりだろう?
堆橋 みやび
「アイスティー、お砂糖多めがいいな」
堆橋 みやび
「おねーさんは?レモン入れる?」
鴨川 水歩
「いいねえ、入れよ入れよ」
鴨川 水歩
ごろごろと持ってきたシロップや、レモンやミルク。
鴨川 水歩
テーブルに転がして。
堆橋 みやび
その転がる音を聞くのは何時ぶり。
堆橋 みやび
あれ、と顔を上げる。
堆橋 みやび
物音が、またひとつ。
鴨川 水歩
それで、何から話そうか、と。口を開いた矢先に。
鴨川 水歩
こちらもまた、それに気づいた。
晴張 希海
信号も標識も意味をなさない道。
晴張 希海
いつも元気な愛車を時速80kmほどで走らせていた。
晴張 希海
同じコンビニでも、品揃えというのは結構違うもので
晴張 希海
今日は何があるかなどと、ナビの示す場所へ向かっている途中である。
晴張 希海
ふと、視界に、人が
晴張 希海
晴張 希海
思ったときには急ブレーキを踏んでいた。
晴張 希海
「は?え?」
晴張 希海
反動でハンドルに頭をぶつけそうになりながら、窓ガラス越しに道を振り返る。
晴張 希海
シートベルトは命を救うって本当なんだな。
晴張 希海
いつもなら2秒で外せるそれを焦りながらなんどか外して車をおりる。
晴張 希海
斜めに停車した車体が車線をまたいでいるが、まあ問題ないだろう。
晴張 希海
扉を開け放したまま。
晴張 希海
歩道の段差に足を取られたり、転びそうになりながら。
晴張 希海
確かめるために、駆け足で道を戻っていく。
鴨川 水歩
とりあえず立ってはみたが、迎えにいくのもおかしいかも、と。
過ぎって、そこに立ち尽くすことになる。
鴨川 水歩
幾度かの瞬き。みやびと顔を見合わせる。
堆橋 みやび
傍らで呑気にアイスティーにガムシロップを入れていたけれど。
堆橋 みやび
水歩の視線を受けて頷いた。
堆橋 みやび
「おなかま?」
晴張 希海
消えてしまいやしないかと、なるべくその姿を視界に入れたまま走る。
鴨川 水歩
「みたい……だねえ……」
鴨川 水歩
おーい、と手を振ってみた。
鴨川 水歩
ここにいるよ、と。
堆橋 みやび
アイスティーを飲む。
晴張 希海
そうして、たどり着いたときにはそこそこ息が上がっていて。
晴張 希海
顔を上げて
晴張 希海
「………」
晴張 希海
「あー……」
鴨川 水歩
「こんにちは」
晴張 希海
2人の顔を見て
鴨川 水歩
今度は噛まなかった。
晴張 希海
「どう、も?」
堆橋 みやび
アイスティーを飲んでいる。
鴨川 水歩
「えー、すごいな、また人だ」
晴張 希海
その場に立ち尽くしたまま、2人の顔を交互に見て。
晴張 希海
「あ~……」
晴張 希海
「もしかして、君達も……ずっと?」
鴨川 水歩
ピース。
堆橋 みやび
ごくん。アイスティーを飲み込む。
堆橋 みやび
からから、とグラスに刺さったストローを遊ばせて。
堆橋 みやび
「うん」
堆橋 みやび
くるくると渦を巻く水面。
晴張 希海
「え~、嘘。マジで?ぜんっぜん気ぃつかんかったし」
晴張 希海
「え~……マジか~……」
鴨川 水歩
「わかるよ~、あたしもさっき!ほんとにたった今さっきそのコと会ったとこ」
鴨川 水歩
ね、とみやびに顔を向けて。
鴨川 水歩
「え、もしかしてこのままみんな戻ってきたりする……?」
晴張 希海
「…………」
堆橋 みやび
ストローは止めない。
堆橋 みやび
からから。
晴張 希海
じっと、もういちど2人の顔を見て。
堆橋 みやび
「渦って、原因がなくなんないと」
堆橋 みやび
「なくなんないんじゃない」
晴張 希海
「もしかして、運命ってやつ……なのかな?」
堆橋 みやび
「ね、おにーさん」
堆橋 みやび
「運命」
堆橋 みやび
反芻した。
鴨川 水歩
「え~?」
晴張 希海
「前にどこかで会ったことある?」
鴨川 水歩
「ナンパにしちゃ下手だな」
晴張 希海
ええっ
堆橋 みやび
「単位貰えなさそうだよ」
晴張 希海
そんなっ
堆橋 みやび
「どう?おねーさん」
晴張 希海
「いやいやいや……えっ」
鴨川 水歩
首を振る。
堆橋 みやび
「だめみたい」
晴張 希海
「そ、そうか~……」
晴張 希海
「じゃあ、今日からお知り合いってことで」
晴張 希海
ズボンの後ろポケットから手慣れた様子で革の名刺入れを取り出し、その中から2枚を取り出してそれぞれに差し出す。
堆橋 みやび
「ん」
堆橋 みやび
受け取る。
晴張 希海
仕事用のものだ。
『Starfish』という店のロゴと、大きく『のぞみん』という名前が記載されている。
SNSや電話番号は仕事用のものだ。
晴張 希海
「俺ね、ホストなの。」
晴張 希海
「もしここ、抜け出せたら遊びに来てね」
鴨川 水歩
「うわ、ホストの名刺初めてみた」
堆橋 みやび
「ホストの店って遊びに行くとこなの」
鴨川 水歩
「うわ~~~~っ、派手!」げらげら。
堆橋 みやび
水歩にひそひそ。
鴨川 水歩
「やだ見てほら 名前んとこキラキラする」
鴨川 水歩
「え?そういう営業かも。騙されちゃダメだよ」ヒソヒソしているふり。
堆橋 みやび
名刺を矯めつ眇めつ。
晴張 希海
黒字に金で名前が入っている。
縁は波模様、店の名前の通り、エンボス加工で海月がはいっている。
鴨川 水歩
「エンボス掛かってる~~!!」たのしそう。
堆橋 みやび
「えんぼすって何?」
鴨川 水歩
「ほら、ここんとこのクラゲの線が凹んでるでしょ」
晴張 希海
う~ん、微妙な反応。
鴨川 水歩
「いやあ、おもしろいおにいさんだな」
晴張 希海
「君達は?学生さん?」
鴨川 水歩
名刺の角を軽く顎に当てながら。
鴨川 水歩
「あたしは社会人~」
堆橋 みやび
「だいがくにねんせー」
堆橋 みやび
「学生さん」
堆橋 みやび
言い直した。
鴨川 水歩
「あ、そういえば名乗ってなかったな」
鴨川 水歩
「あたし、みなほね。水に歩くって書いてみなほ」
鴨川 水歩
「鴨川水歩」
鴨川 水歩
みやびに目を向ける。
堆橋 みやび
頷く。
堆橋 みやび
「あたしは、うずはし みやび」
堆橋 みやび
「堆い橋にひらがなでみやびで」
堆橋 みやび
「堆橋みやび」
堆橋 みやび
そしてもうひとりの口が開くのを待つ。
晴張 希海
「水歩ちゃんとみやびちゃんか~」
晴張 希海
「こんなことになっちゃってびっくりだよね~」
晴張 希海
えっ、俺も本名言った方がいい雰囲気?
鴨川 水歩
コク……
堆橋 みやび
ウン。
晴張 希海
「あ~」
晴張 希海
「俺はねぇ……はるばる、のぞみ。これ本名。お店で言わないでね。」
晴張 希海
名刺入れが入っていたのとは逆の尻ポケットから財布をひっぱりだし、中から取り出した免許証を見せる。
写真はちょっと若くて髪が黒い。
鴨川 水歩
「え~っ、はるばる、いい名前じゃん!」
堆橋 みやび
「はるばる」
鴨川 水歩
「うわ免許」
堆橋 みやび
空を見上げた。
鴨川 水歩
その手から奪い取ってまたげらげら笑っている。
晴張 希海
「あっ」
晴張 希海
まいいか、どうせ明日には戻ってくるし
堆橋 みやび
それを見ながらアイスティーを飲んでいる。
鴨川 水歩
「えっ、26?一個上じゃん~」
晴張 希海
「一応ほら、俺は成人男性だし?身の潔白と言うか……安全性というか……ね?怪しいもんじゃないよっていうか~」
鴨川 水歩
「たしかに、今新しく免許つくれないもんね」
鴨川 水歩
ちゃんと返す。
堆橋 みやび
「まじめなんだ」
堆橋 みやび
「ちゃんとしてる」
鴨川 水歩
「ね!感心感心」
堆橋 みやび
「ね」
堆橋 みやび
頷き合う女たち。
晴張 希海
「よかった」
晴張 希海
免許証を受け取ると、それらを元のように。
鴨川 水歩
「そう、それで」思い出したように指を立てる。
鴨川 水歩
「あたしたち、さっき会ったばっかりでね、せっかくならお茶しながら情報交換しよーってしてたとこで」
鴨川 水歩
「のぞみんもするよね?」
晴張 希海
「そうさせてもらえるとありがたいかな」
堆橋 みやび
「いいね」
鴨川 水歩
「三人寄れば文殊の知恵といいますし~」
鴨川 水歩
「生まれた場所は違えども死ぬときは同じともいいますし~」
晴張 希海
死にたかないな~
堆橋 みやび
「かまめし」
堆橋 みやび
「釜めしみたいなことわざなかった?」
晴張 希海
「同じ釜の?」
鴨川 水歩
「同じ釜の飯を食うやつね」
鴨川 水歩
「それはほら、ケーキがあるから」
堆橋 みやび
「それだ」
鴨川 水歩
「同じ店のケーキを食べましょう」
堆橋 みやび
「飯がないならケーキを食べればいいじゃない?」
鴨川 水歩
「いいね~!のぞみんもミルフィーユ食べよ!」
晴張 希海
「ふたりとも天才かも」
堆橋 みやび
ミルフィーユの層を数えている。
晴張 希海
「うんうん、俺もケーキとってくるね」
晴張 希海
本当はチョコレートケーキのが好きだけど
晴張 希海
ここはミルフィーユだな~
鴨川 水歩
三人分、飲み物も同じものがテーブルに並んで。
堆橋 みやび
ほんとうに釜めしだ。
晴張 希海
同じ釜というか、もはや桃園かも
鴨川 水歩
孤独の時間のことを、上辺ばかりすくって話すことになるだろう。
堆橋 みやび
そして、この先のこと。
堆橋 みやび
ここのこと。
堆橋 みやび
ここには三人いる。
堆橋 みやび
きっと、ひとりで居るよりもたくさんのことが相談できるだろう。
GM
やがて皿の上のミルフィーユはなくなり、アイスティーは飲み干され……
GM
しかし、これまでの孤独を潤すおしゃべりは尽きることなく。
GM
ここでなければ関わることもなかったであろう三人は、同じ時の囚人としてお互いを知り。
GM
ひさしがテラスに作る影がすっかり位置を変えるころ、三人揃って席を立つ。
GM
永遠の中を漂う街へ。